『チームの力』から考える組織運営 -4- ~理念が組織の”ほんとう”になるまでは思考停止しない~

Pocket

「すきより」新シリーズ、「『チームの力』から考える組織運営」編。

第4回は、「価値の原理」の内訳の一つ、
「目的の本質を抽象化したものが理念」についてふれます。

これまでの「すきより」シリーズと同様、
博士と助手ちゃんによる、対話形式で行います。

 

理念が組織の”ほんとう”になるまでは思考停止しない

博士
みなさん、こんにちは。
助手
こんにちわ~!
博士
今回は、「価値の原理」の4つの内訳のうち、

「目的の本質を抽象化したものが理念」を見ていきたい。

博士
西條先生は、理念について、

 「それ(チームの理念)は、目的の抽象度を上げて、
その本質を象徴的に言い当てたものであり、
そのチーム(組織)の目指す方向を端的に示したもの」(P49)

博士
…と定義しています。
助手
なんか、ぼんやりしたお話ですねぇ。
博士
理念は、それが定まるまでは、ぼんやりした状態で活動していくしかない。

ただ、そうした模索期間のなかで、理念を問い続けることが大切なんだ。

 

「腑に落ちる答えが得られるまでは、不明瞭であることを自覚しながら、
『このチームが最も重視すべきことは何か?』
『この組織の存在意義は何か?』
と問い続けることだ。」(P54)

「また最もシンプルで効果的な方法は、
チームメンバーで話し合うことだ」(P54)

 

助手
そこまでして、理念を問わなくても、
どこかで、えいやっ! で決めちゃダメですかね?
博士
西條先生は、

 「理念を明確化するときに大切なことは
安易に『これでいいや』と思考停止してはいけない」(P53~54)

博士
と言ってます。
助手
何でそこまで……といいたいところですが、

そこまでしないと、組織ってものは往々にして、究極の目的「自分たちが(他集団を打ち負かしてでも)生き残る」に、流れちゃうからですよね。

そうじゃなくて、人間の本性と言ってもいい究極の目的に逆らってでも、あくまで達成したい目的があるから、
目的の明確化しての理念決定が必要、なんでしょうね。

博士
そうやね。で、人間がつくる組織は、実に簡単に究極の目的に流れる。

ただ、この究極の目的は、組織内の人間にとっては、絶対に死守しないといけない生命線だけれど、

そうでない組織外の人間にとっては、はっきりいってどうでもいい。

助手
だからこそ、理念は組織外から人間を(報酬以外で)引き込む上では、かなり重要なウエイトを占める。

でも、そうした理念重視派の人はとりわけ、「言ってることとやってることが一致しているか」を見ますよね。

博士
西條先生も、

  「人間は何を言ったかよりも、何をしているかをみている。
それらが矛盾するとき、行動にその人の(チームの)”ほんとう”が
現れているとみなす」(P52)

博士
と言っています。

NPOなんかでは、理念とやっていることが矛盾していることが気づいたら、その人は、その組織を離れていく。

助手
「辞める」というオプションが何重にも塞がれている日本企業の場合、

組織は離れないけれど、”ほんとう”に自分をあわせる。

だから、組織不正なんかは、それが組織の”ほんとう”であり、ぶっちゃけ、それは往々にして、組織の「究極の目的」に沿ってる。

博士
だからこそ、西條先生は、

  「理念を語るとき、その想いと言葉は借り物であってはならない。
なぜかといえば、その人が本気で実現する価値があると思えば、
その情熱は伝播するし、逆に心の底から思っていなければ、
それも伝わってしまうからだ」(P53)

博士
と指摘しています。
助手
ごく個人的に気になるのは、「理念に共感して動く人」と「教育」に、
どれだけ相関があるのか、という点なんですよね。
博士
というと?
助手
いや、2016年10月に、
“IS志願者は高学歴、貧困は「傾倒」の要因ではない 世銀報告書”
http://www.afpbb.com/articles/-/3103441
助手
という記事が、ちょっと話題になりましたよね。

要は、ISIL側も、理念とやっていることが矛盾していないし、志願する人も、カネがほしいという貧困に起因したものではなく、その理念に共感しているわけでしょ?

もし、「理念に共感して動く人」と「教育」にある程度の正の相関があるなら、優秀な人を獲得するためには、理念が欠かせない。

逆に、変な理念で世の中を乱されたくなければ、教育水準を下げる、一種の愚民教育が必要なのかもしれない?

もし、相関がないのであれば、優秀な人を獲得したいといっても、理念はそこまで重要じゃない、ということになる。

博士
い、いや、それはかなり極端な話やね……

実際のところ、「理念に共感して動く人」と「教育」に、どれだけ相関があるのか、わからないなぁ。

助手
データを知らないので、何ともいえないですが、

この「理念」が人のシステム2をくすぐるものであるならば、「理念に共感して動く人」と「教育」には、ある程度の強い相関がありそうですが、

実際のところ、「理念」はたいてい、人のシステム1とか<象>に、働きかけるところが少なくないでしょうから、そう考えると、あんまり相関はないのかも。

博士
どうだろうね。
少なくとも、ふんばろうの「なくなることが目的である」という理念は、ある程度、理性的に考えないとピンとこない気もするけど。

理念の3つの本質 ~理念は組織の価値観、コンパス、憲法~

博士
西條先生は、理念の本質について、

・組織の価値観
・組織のコンパス
・組織の憲法

博士
だと指摘しています。
助手
「価値観」ということは、要は、価値観が合わないとチームは機能しない、ってことですよね。

この場合、よく言われる組織の多様性はどうなるんでしょう?

博士
西條先生は、この点については、

「根本的な価値観を同じくしていなければ、ただのカオスだ」

と言い切ってますね。

同じ価値観の元に、異なる個性、能力が集まることが、組織にとっての多様性だと言っています。

助手
言いかえれば、多様性に目を向けると言うよりは、同じ価値観に目を向けろ、ってことですよね。
ジョナサン・ハイトもそんなこと言ってましたね。

 「集団の結束力を高めるためには、
所属する誰もが家族の一員であると
感じられなければならない。

ゆえに、人種や民族の違いに目を向けてはならない。

類似性を強調し、集団が共有する価値観や
アイデンティティを称賛することで、
これらの違いが重要な意味を持たないようにすべきである。」
(『社会はなぜ左と右にわかれるのか』P370)

博士
この点は、西條先生のみならず、とりわけNPO関係者はよく実感している。

『世界を変える偉大なNPOの条件』でも、組織の使命や目標、価値観を伝えることが、参加者を集める上でも大切だと強調されている。

助手
その点、理念は、組織の「物語」を一言でまとめたものとはいえるでしょうね。

 「私たちは何度も同じようなことを聞いた。
『重要なのは、マーケティングではなくメッセージだ』」
(『世界を変える偉大なNPOの条件』)

博士
「コンパス」というのも、言ってることは一緒で、

それがないと、組織内の各人が、それぞれ全然違う方向に進みやすい。

助手
各人、というよりは、各小集団、というほうが、往々にしてありがちでしょうね。
博士
「憲法」というのは、意思決定の根幹をそこにおくべき、ということになります。
助手
「法の支配」ならぬ「理念の支配」というところですかね。

これって、人間関係とか、場の空気で意思決定しやすい日本人には、結構レベルが高いのでは?

博士
そんなことはない。

要は、理念が「空気」になるほどに、理念を浸透させれば良い、ということになる。

助手
……その過程が、相当大変なんですけど……
助手
ま、そこは「思考停止してはいけない」のでしょうね。

<まとめ>

 

・理念は、組織内で定まるまでは、
安易に思考停止して決めちゃいけない

・人は、言ってることよりもやってることを見ている。
両者が矛盾する場合は、やってることを”ほんとう”とみなす

・理念は、組織を結束するための根本的な価値観
多様性は、あくまで「同じ価値観の元での多様性」

・理念は、組織の方向性を示すコンパスであり、
意思決定の根幹となる憲法でもある

 

Comments

comments

Pocket

「社会起業電脳研究室」無料メルマガ

上記の記事を、ホームページに更新されるより前に、 読みたくないですか? そんなせっかち(もしくは奇特な?)アナタに、 「社会起業電脳研究室」メルマガはオススメです。