『世界を変える偉大なNPOの条件』-7-

しばらく、
NPOの協働、ネットワークのありかたについて、
原則と事例両方のアプローチの一環として、

『世界を変える偉大なNPOの条件』(以下、資料と記載)を、
題材に考えていきます。

今回からは、偉大なNPOが持つ6つの原則のうち、
「原則3:熱烈な支持者を育てる」をとりあげます。

外部の人をエバンジェリストに変えるための4つの法則

資料では、偉大なNPOは、

「外部の人を巻き込んで、
 ボランティアや寄付者、助言者、支援者、
 エバンジェリストに変えることに長けている」

と記載しています。

なんか「巻き込み力」という言葉をイメージしてしまいますね。
「巻き込み力」でググると、たくさんヒットします。

しかし、偉大なNPOは、ただ巻き込むのではなく、
熱烈なファン(エバンジェリスト)に変えるのに長けている

また、そうしたエバンジェリストたちの、
 コミュニティを作るのに長けている。

じゃ、どうやってエバンジェリストに変えていくのか?
気になるところですね。

資料では、「参加意識を高める4つの法則」という形で、
その流れを紹介しています。

ただ、あらかじめ言っておきますが、
特効薬的なものは、何もないです。
たぶん、見たら「まぁ、そりゃそうだろうねぇ」となること請け合い。

<参加意識を高める4つの法則>

(1)組織の使命や目標、価値観を伝える
(2)意義のある体験を生み出す
(3)エバンジェリストを育てる
(4)愛されるコミュニティを築く

……ねっ、特効薬的なものは、何もないでしょ?

たぶん、多くの人は(とりわけNPO関係者は)、

「んなもん、わかっとんじゃゴラァ!」
と叫びたくなるのでは?

しかし、やっぱり、実績のあるNPOは、
この4つの法則をすべて体現しているわけで。

今回は、うち「(1)組織の使命や目標、価値観を伝える」を、
掘り下げていくことにします。
結局、この法則が全ての出発点なので。

偉大なNPOはマーケティングを超越する

「でも、NPOって、組織の使命や目標、価値観を、
いつも訴えてますよね?」

確かに、それはどのNPOだって同じ。
では、偉大なNPOは、他のNPOと何が違うのか?

資料では、偉大なNPOは、
「人々のほぼ無意識の部分に訴えることができる」
と記載しています。

心の琴線に触れる部分に訴えることができる、というわけです。
では、どうやって心の琴線に触れることができるのか?
まず、資料では、
それはマーケティングではできないと指摘しています。

「価値を伝える行為は、
 一般に理解されているような、
 従来のマーケティングを超越している。

 単に切実さを訴える資料や
 見栄えのよいウェブサイト、
 説得力のある大量のデータや
 ダイレクトメールのキャンペーンではない。」

それが必要ない、というわけではなく、
もっと別のアプローチをとっているわけです。

では、どのようなアプローチをとっているのか?
それは「物語」というアプローチです。

「むしろ価値を伝えるということは、
 ストーリーを語り、
 自分たちの取り組みを支援者の信念と結びつけ、

 『仲間になりたい』と彼らに強く思わせることである。」

「私たちは何度も同じようなことを聞いた。

『重要なのは、マーケティングではなくメッセージだ』

NPOが示すメッセージの中に、
「そこに、自分たちが求める理想がある」と感じれば、
支援者がそこに集まってくる。

そうした支援者たちは、
理想を土台としたコミュニティに属することを願う。

「コミュニティに属したいという気持ちは誰でも持っていて、
 そこで価値観を共有することを望んでいる。
 そこに参加すれば、自分たちが
 世の中に何かを与える機会をもてるのだ。」

マーケティング的なアプローチを超越しているという点で、
偉大なNPOはさらなる特色を持ちます。

それは「必ずしも対象者を絞り込まない」という点です。

マーケティングのイロハを知っていれば、
マーケティングのキモにSTPがあることがわかります。

いかに市場を細分化し(セグメンテーション)、
その中でターゲットを選定し(ターゲティング)、
さらに、そこでいかに自分たちが優位に立つか(ポジションニング)。

偉大なNPOは、こうしたマーケティングを放棄しています。

「社会的公正や民主主義、自由、多様性などの、
 より優れた『善』を基本的信条として活動している。
 
 さまざまなテーマについて、彼らは中道の立場をとり、
 党派を超えて働きかけることができる。
 これは、多様な人々が参加する大きなコミュニティを築くのに
 有益な手法である。」

 要は、より多くの人の琴線に触れる、
 共通善といったものに訴える。

「儀式」と「神話」を積極的に活用するアプローチ

ここまでくると、偉大なNPOが、
組織の使命や目標、価値観を訴える手法が、
理性的なアプローチを土台にしていないことが、
理解できると思います。

では、理性以前のアプローチとは?
それは、「儀式」と「神話」です。

ここからは、資料に登場する、
シティイヤーという教育NPOを取り上げます。

儀式の例としては、

・地域の一番公共性の高い場所で、
毎朝ユニフォームを着て体操する

・ユニフォームやシンボルマークにも、
徹底的な意義付けをする

「儀式は参加者の心をつなぎ、
 組織の存在感を高め、
 一般市民に対して理想主義を吹き込む助けとなる。」

神話の例としては、

・理想主義、民主主義、参加、楽観主義、奉仕という
基本的価値観を説明する神話を
「草創の物語集」として文章化している

「神話は現実よりも真であり、
 現実は私たちが覚醒時に一緒に見る大衆夢のようなものだ。
 儀式はそういう大衆夢に近づく方法。
 シティイヤーでは、人間には神話と儀式の両方が必要だと考えている」

そのうち、資料で紹介されているものとして、
「ヒトデの物語」があります。

ヒトデの物語でググると、たくさん出てくるのですが、
資料に記載されているのと、微妙に違います。
資料に記載されている内容のポイント紹介します。

——————————————————–
これは。浜に打ち上げられた
何千匹のヒトデを見つけた少女の物語。

少女は、そのヒトデを一匹ずつ海に向かって投げた。
それは、一見無駄な努力に思われたが、
やがてそこに村人が加わり、ヒトデはすべて海へ帰っていった。
——————————————————–

ググった内容だと、
少女が「あのヒトデにとっては意味があった」で完結しています。
(誰も助けに来ないで、たぶん大半のヒトデは死んでる)

上記のお話はシティイヤーによる改訂版でしょう。

この改訂版(?)にシティイヤーがこめたメッセージは、

「理想主義的な行為は、
 それが極めて象徴的なものであっても、
 人々を行動に駆り立てる力を持ち、

 時には課題に重大な影響を与えるのに十分な数の
 人々を動かすことがある」

なのだそうです。

「これらの神話や儀式、物語のすべてが、
 シティイヤーの目標とさまざまな段階にある価値観を伝え、
 若者を刺激して仲間に加わりたいと思わせる。」

「……これって、一種の宗教じゃね?」

そう直感したアナタは正しい。

シティイヤーのやり方は、
近代以降の、どちらかといえば教義(ビリーフ)を中心とした宗教ではなく、
儀式(プラクティス)がどちらかといえば中心の、
近代前の宗教のあり方に近い。

シティイヤーのいう神話や物語は、
ゆるい教義(ビリーフ)といえるのでしょう。

こうしたやり方は、ナチスドイツでも積極的に採用され、
日本では、オウム真理教がこうしたやり方を採用したといえます。
(宗教学者の島田裕巳氏の指摘)

かといって、別にシティイヤーが
間違ったことをしているわけでもない。

ポイントは、こうしたやり方が、
無意識レベルでの琴線に触れやすい、ということ。
その点で、取り扱い注意、とはいえるのかもしれませんね。

ま、中途半端にシティイヤーのやり方を実践しようとしても、
どうせうまくいかないわけで。

「何が無意識の琴線に触れるか」に意識をおく

たぶん、シティイヤーのやり方は、
世界レベルでの応用がきくのかもしれませんが、
どちらかといえば、欧米の人にとって、
効果が高いように思われます。

その点で、

「日本人にとって、無意識の琴線に触れるポイントは何か?」
「広島人にとって、無意識の琴線に触れるポイントは何か?」
「女性にとって、無意識の琴線に触れるポイントは何か?」

といった点を明確にすることは、重要だと思われます。
ま、ポイントを明確にしてから活動が始まるなんてことはなく、
活動を始めたあとに、そうしたポイントに気づくことが多いのですが。

そう考えると、タイガーマスク運動は、
間違いなく日本人にとって、
無意識の琴線に触れるポイントがあった。
だからこそ、全国的なうねりをおこすことができた。

タイガーマスク運動については、
様々なレベルでの批判もありますが、

「理想主義的な行為は、
 それが極めて象徴的なものであっても、
 人々を行動に駆り立てる力を持ち、

 時には課題に重大な影響を与えるのに十分な数の
 人々を動かすことがある」

というメッセージの証明としては、
ひとつの意義を持ちえたのかな、とは思います。

実は、無意識の琴線に触れるメッセージを土台とすると、
 琴線に響いた人の自己変革を促しやすくなります。
 その点で、参加者をエバンジェリストにする第一歩になります。

その次に必要なのが、儀式(プラクティス)になります。
活動を実際に体験することは、儀式の一環です。

次回は「(2)意義のある体験を生み出す」以降について、
ふれていきます。

 

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