『世界を変える偉大なNPOの条件』-6-

 しばらく、
 NPOの協働、ネットワークのありかたについて、
 原則と事例両方のアプローチの一環として、

 『世界を変える偉大なNPOの条件』(以下、資料と記載)を、
 題材に考えていきます。

 

 今回は前回に続き、偉大なNPOが持つ6つの原則のうち、
 「原則2:市場の力を利用する」をとりあげます。

「市場の力を利用する」リスク

 前回は、「市場の力を利用する」メリットのお話でしたが、
 今回は、それに伴うリスクのお話をします。

 資料では、そのリスクを次の5つに分類しています。

(1)使命を逸脱する心配
(2)「身売り」という認識
(3)正しい提携相手を見つける
(4)他の問題との緊張関係
(5)収益事業の限界

 「使命を逸脱する心配」。これは大きいですね。
 
 資料でも、

「企業と提携したり、収益事業を行ったりするNPOが抱える
 最も大きなリスクは、
 おそらく本来の社会貢献の使命からそれてしまうことだろう。」

 と明確に書いています。

 企業と提携すれば、
 企業の言いなりになってしまうかもしれない。
 ある種企業の下請け状態。

 資料には書いていないですが、
 日本では行政との提携の結果、
 ある種、行政の下請けになっているNPOも多いですね。

 収益事業については後述。
 さて、資料では、

「しかし、本書で取り上げた影響力の大きいNPOでは、
 このような使命からの逸脱が問題になっていない。

 この事実に理由があるとすれば、それは、
 もっと社会に影響を及ぼしたいという彼らの切なる願いが、
 こうした提携に走らせているという点だ」

「さらに、彼らがいくら実利的であるとはいえ、
 社会目的が妥協のリスクにさらされるときには、
 きっぱりと線引きをする。」

 と記載しています。
 
 ここで、資料の言うことを真に受けて、
「使命を逸脱するかどうかは、想いの強さで決まる!」
 な~んて精神論に突っ走ってはいけない。

 ここで見落としてはいけないのは、

「提携の結果、中途で提携を解消、線引き、損切りしたとしても、
 組織を問題なく維持できるだけの組織力、
 ないし提携を有利に解消できる交渉力があるか?」

 という点。

 行政等の提携は、金額が数千万単位だったりするため、
 ともすると、身の丈以上の提携になりがち。
 そうすると、提携を解消できなくなる。

 加えて、Win-WInの交渉を目指す交渉力に加え、
 交渉が利益にならない(社会目的が妥協のリスクにさらされるなど)
ときに、それを有利に解消できる交渉力があるか?

 企業(あるいは行政)との提携で「魂を売る」かどうかは、

 「たとえ明日提携を解消しても、組織へのダメージは少ないか?」

 で図れるのではないかと、個人的には考えます。

 言い換えれば「世界を変える偉大なNPO」クラスだと、
 それは言うまでもない前提としてあるわけです。

 「身売り」という認識、ですが、
 要は、提携によって「魂を売ったんじゃね?」という印象を、
 周囲に与えてしまう、ということですね。

 ただ、昔よりは社会セクター全体も、
 あるいは寄付者も、行政等と提携しても、
 別に「魂を打った」なんて考える人は少なくなっている。

「社会セクター全体が企業との関連作りに慣れると同時に、
 寄付金の活用度が企業提携によってさらに高まることを
 寄付者が理解するにつれて、
 この心配はなくなってきている。」

 とはいえ、誰とでも提携していいわけじゃないですよね。

 消費者金融業者が提携を申し出てきたら、
 イメージ戦略である可能性も、
 高く見積もっておく必要がある。

「それでもNPOは、
 提携相手の宣伝の道具に使われていると非難されないために、
 特に相手の動機に気をつけなければいけない。」

 
 「正しい提携相手を見つける」ですが、
 日本だと、NPO側というより、
 むしろ企業側の要請でしょう。

 資料でも、

「両者がうまく協力して、互いの目標と動機が
 かみあっていることを確信しなければならない。」

 と書いていますが、往々にしてかみあわない。
 

「いずれか一方に不正があると、
 苦労して培った清廉なイメージや信頼性が、
 損なわれる危険がある。」

「NPOは、企業から助成の提案を受けた場合、
 彼らの動機や目的、真摯さを確信するまでできる限り調査し、
 提携先としての適正を判断しなければならない。」

 日本では、これらは、
 たぶん(というより間違いなく)企業側の叫びじゃないでしょうかね?

 ま、提携の前提で、互いに情報開示してるのは当然ですが、
 NPO側は、なんだかんだで、
 情報開示できてないことが多いわけで。

 P-SONICも、その辺は不足しているので、
 人をどうこういう資格はないのですが。

(ただ、「社会起業支援サミット」などの、
 ステークホルダーが一定以上からんでいる活動に対しては、
 最低限の報告書は作成して、公開しています)

 「他の問題との緊張関係」は、たとえばアドボカシー。

 NPOが何らかの政治的主張を支持し、
 企業が反対の立場をとる場合ですね。

 ただ、個人的にはピンときませんが。

「事業を行ったほうが、ボランティアよりも継続的、大規模に社会課題に取り組める」なんてウソ

 さて、「収益事業の限界」。

 資料では、社会起業について、
 非常に厳しい現実を指摘しています。

「社会起業に対する期待はあるが、
 まだNPOが望むような特効薬にはなっていない。
 使命に関連した明らかな収益源を持たない多くのNPOは、
 小さな事業ですら立ち上げて持続させることは難しい。」

「費やす時間やエネルギーに見合わない収益しか得られなかったり、
 そもそも事業アイデア自体が利益を出せるものではなかったり、
 立ち上げるための技術や知識が不足している場合もある。」

「事業収益は、資金に苦しむほとんどのNPOにとって、
 主要な収益源になるものではない。」

「何者にも縛られない資金を持つ魅力は大きいが、
 慎重でなければ社会的使命から大きく逸脱したり、
 事業に失敗して損失を出したりする可能性もある。」

「純粋に地域サービスか政策アドボカシーかの
 いずれかで活動しているNPOの場合、
 使命に関連した実際の利益を出せる事業を見つけることは、
 あらゆる費用を考慮すれば、
 きわめて困難だといわざるを得ない。」

 …ま、わかってることではあるんですけどね。

 というより、事業を新規に立ち上げて、
 10年以上継続して残っている割合が、
 1000人につき3人程度なわけで。

 まして、そこに社会的使命との整合性を加えると、
 その成功確率は、さらに下がっていくに決まってます。

 では、会費や寄付金中心で運営するNPOは、
 事業を運営するよりも、はるかに簡単に持続的な運営ができるのか?
 それは、運営の規模によりますよね。 

・普段は別の仕事を持っている人が週末に事務局を運営。
 
・普段は別の仕事を持っている人が集まって、
 一人が毎月5,000円×30人以上で、
 専属スタッフを一人は雇えるでしょう。

 このレベルでの事務局でも、ある程度の活動はできます。
 というより、日本のNPOは、たいていこの規模感。

 では、事業運営がこの規模感以上のものになるかといえば、
 様々な損失が発生する可能性を考えると、そんなに甘くない。
 そう考えると、

「事業だから、NPOやボランティアなんかで細々とやるより、
 はるかに大掛かりに社会を変えることができる!」

 というのは、全くの幻想であることがわかります。
 そうではなく、
 
「ある社会課題Aの解決のためには、
 事業を行うのが一番効率的だから、事業を行う。」

 事業を行うのは、
 単に「何者にも縛られない資金を持つ」ためではなく、
 その事業が、社会課題解決につながる。

 ともすると、会費や寄付金集めというのは、
 地味な作業というイメージもあるため、
 どうしても「事業を通して、社会を変える!」になりやすいのですが、

本当にゼロベースで社会課題解決のための方策を検討して、
 事業実施が最適解であることを、皆が納得して、
 その上で事業型の社会課題解決を行うのが、
 あるべき姿なのでしょう。
 

 次回からは、原則3「熱烈な支持者を育てる」についてふれます。

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