『世界を変える偉大なNPOの条件』-4-

しばらく、
NPOの協働、ネットワークのありかたについて、
原則と事例両方のアプローチの一環として、

『世界を変える偉大なNPOの条件』(以下、資料と記載)を、
題材に考えていきます。

今回は、前回に続いて、偉大なNPOが持つ6つの原則のうち、
「原則1:政策アドボカシーとサービスを提供する」をとりあげます。

政策転換を成功させる5つの原則

政策アドボカシーを通して、
実際に政策転換を成功させるために求められるものは何か?

資料では、以下の5つの原則をあげています。

(1)実利主義と理想主義のバランス
(2)超党派を原則とする手法
(3)信頼と高潔を維持する
(4)政策通を雇う
(5)アドボカシー活動のための財源を見つける

それぞれについて、詳しく見てみましょう。

「(1)実利主義と理想主義のバランス」は、

以前も取り上げた「現実的な理想主義」というべき、
社会起業家スピリッツです。

政策アドボカシーにおいては、
以下のような態度として表れます(資料より引用)。

・これらのNPOは、
問題に対して単に注意を喚起するのではなく、
解決策を提示することを重視する点で、
とりわけ実利的である。

→「○○は悪い」「××が問題だ」「わーわー」
とか叫んでるだけでは、問題解決にはつながりにくい。

問題解決のためには何が必要で、
そのためには具体的にどのようなアクションプランが必要か。
その提示を重視すべき。

・活動家は、制度的枠組みの外側から
グローバル資本主義や現在の政権を批判するが、
本書に取り上げた組織は、
現状の政治経済的な枠組みの「なかで」成果を出そうとしている。

→外野で思想批判や政権批判する分には、
勝手にしたらいいのですが、

それよりは、現状の枠組みの中で成果を出せるのならば、
それにこしたことはない。

・支持者数といったような、
数の面での影響力を最大限に発揮するためには、
極端な立場をとらず、政治的に中庸な意見を持つ層に
幅広く訴えなければならない。

→極端な意見は、特定の人の心を「強く」とらえる、
いいかえれば「信者にできる」点では強みですが、

信者向けビジネス、サービスでは、
政策転換を促すのは、非常に難しい。

「(2)超党派を原則とする手法」は、
現実的な理想主義の表れ方のひとつでしょう。

・政党政治を超えた立場で課題を考え、
目標達成を助けてくれるならば誰とでも協力する。

→この考え方は、
なかなか支持されない考え方だと思います。

アメリカ人からすれば、共和党と民主党の分断は日常レベルで著しく、
最近ますますその傾向が強まっているので、
共和党とも民主党とも協力して云々、というのは、
相当にハードルが高い。

日本人からすれば、
実際のところ政党間の分断というのはあまり激しくないので、
割と政党間の連携とか、超党派というのは、
難しくないのかもしれません。
(共産党の場合、他の党と比べると非常に難しい?)

ただ、日本の場合、宗教アレルギーが強いので、
特定の宗教組織と協力して云々、というのは、
相当ハードルが高いですね。

よく、NPOやボランティアの場合、
特定の政党や宗教を支持する活動はタブーといわれていますが、
これを「政治や宗教団体とは一切関わらない」と、
拡大解釈する向きが強いです。

とはいえ、宗教団体でも、
その教義に従って、
特定の社会課題解決のために活動しているケースも非常に多いわけで。

そうした活動を生かして協働しあう、
あるいはアドボカシーにつなげることは、
なんらタブーではないのですけどね。

ま、そのへんは、「(3)信頼と高潔を維持する」との
バランスなのですが。

とはいえ、「(3)信頼と高潔を維持する」は、
別に怪しい組織と関わらないようにしよう、
というわけではなく…

・実利主義と高潔の維持は紙一重の差である。

・現実的な利益を得るために、
理想を追わず妥協するときがある一方、
妥協が信頼を傷つける可能性があることも知っている。

→「紙一重の差」というより、「パラドックス」といったほうが、
実感としては、正しいと思います。

高潔な精神を追求すると、
信者は集まるけど、世間からは乖離する。
または、課題解決につながらない。
アドボカシーとしては何ら意味がない。

かといって実利主義を重視しすぎると、
団体の信頼度が落ちる(あいつらは金儲け集団だ、とか)

このパラドックスにどう対応していくか。
そこが問われますね。

・データや事実が真実であることはもちろん、
主張の根拠となる情報を決して歪曲してはならない。

→これもまた、難しいですね。
データが主張したいものと一致しない場合、
データを歪曲したり、その解釈を歪曲しやすいですよね。

「(4)政策通を雇う」「(5)アドボカシー活動のための財源を見つける」は、
ずいぶんとリアルな話です。

・NPOがアドボカシー活動を行うには、
そのための技術を自ら築き上げるか、外から調達するかしなければならない。

これは多くの場合、連邦議会や州議会で人脈作りを行い、
さらにアドボカシー活動とロビー活動の経験が豊富な、
スタッフやコンサルタントを雇い入れることを意味する。

・当然ながら、各組織のワシントンDCの事務所には、
政治経験豊かな人材が配置されている。

・多くの組織にとって最大の課題の一つは、
アドボカシー活動のために安定した収入の流れを作ることである。

一般的に、寄付者に対して、大掛かりな研究や政策分析、
あるいはわかりにくい活動への同意を求めることは困難である。

「政策転換を成功させる5つの原則」からみた反原発運動

ふだん、ともすると私たちは、
大規模な政策転換に対して、
無関心になりがちです。

どちらというと、消費税増税のように、
政策転換されそうなものを、何とかして実行されないようにしたい、
といったマイナスの関心を持ちがちです。

その点で、政策転換の難しさについて、
なかなか関心を持ちえないし、実感としてもわきにくい。

ただ、私たちは、近年、
積極的に、大規模な政策転換を希求し、
多くの人が、そのために何らかの活動を起こしたことを知っています。

それが、反原発、脱原発(減原発)運動。
最近だと、卒原発も言われてますね。

しかし、震災直後と比べて、
こうした運動、とりわけ、原発の即時撤廃を目指す反原発運動は、
相当に下火になっている感があります。

もしあなたが、今後の長期的な脱原発(減原発)運動、
いいかえれば、脱原発アドボカシーを成功させようと願うならば、
「政策転換を成功させる5つの原則」からみて、
これまでの反原発運動のどこに問題があったかを振り返ることは、
非常に有効な教訓となりえると思います。

もちろん、この振り返りは、
あらゆる政策アドボカシーの成功においても、
非常に有効な教訓となりえるはずです。

ここでは、詳細にふりかえることはしません。
ぜひ、各自において、振り返っていただきたいと思います。

個人的には、せめて、日本未来の会の活動は、
この5つの原則のよき実証例となってほしいものですがね。

でも、原発問題は、とりわけ、
「実利主義と理想主義のバランス」が難しいので、
それを日本未来の会に期待するのは酷かなぁ。

…次回からは、「原則2:市場の力を利用する」をとりあげます。

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