『7つの習慣』から協働のあり方を考える -5-

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しばらく、協働の「原則論的アプローチ」について、
『7つの習慣』をテキストに使用したいと考えています。

今回取り上げるのは、第4の習慣「Win-Winを考える」。
いかにも、協働っぽいタイトルではないですか。

人間関係の6つのパラダイム

コヴィー博士は、Win-Winを含めて、
人間関係には6つのパラダイムがあると指摘しています。

(1)Win-Win
(2)Win-Lose
(3)Lose-Win
(4)Lose-Lose
(5)Win
(6)Win-Win or No Deal

まず、(4)~(6)を簡単に説明します。

「Lose-Lose」は、コヴィー博士は、
「自分が不幸になっても、相手を不幸にしたい」という指摘をします。

『7つの習慣』では、離婚交渉で資産を分割するさいに、
資産(車など)を法外に安く売って、
はした金を分割する例が紹介されてます。

究極系は「あなたを殺して、私も死んでやる~!」でしょう。

「Win」は、相手のことを一切考慮せず、
自分のWinのみを追及すること。

「ナンバーワンではなくオンリーワン」的なニュアンスですね。

「Win-Win or No Deal」は、Win-Winにならなければ、
そもそも交渉しない、ということ。

「Lose-Lose」「Win」は協働を考える上では論外なので、
コヴィー博士の言葉をもとに、
残りのありかたをみていくことにしましょう。

・「Win-Winとは、当初それぞれの当事者が持っていた案ではなく、
 全く新しい第三案の存在を信じることであり、
 相手や自分の考え方に限定される必要はなく、
 より良い方法があるはずだと確信することである。」

・「Lose-WinはWin-Loseよりもたちが悪い。
 なぜなら、Lose-Winには、基準、希望、期待、ビジョンなどが
 全くないからである。」

・「交渉においては、Lose-Winは降伏することであり、
 リーダーシップのスタイルで言うならば、それは甘さと過剰な寛容さである。
 Lose-Winはお人よしになることであり、お人よしは必ず最終的に負ける。」

…Lose-Win、けちょんけちょんに言われてますね。

Lose-Winと長期的関係

いや、ちょっと待て。
それはLose-Winに失礼ではないか。
そんな声があっても、おかしくない。

「だって、『損して得取れ』という言葉もあるじゃないか。
 短期的に見ればLose-Winでも、長期的に見れば、
 それがWin-Winにつながることもあるだろう?」

多くのビジネスマンが、同意するところではないでしょうか。

このことをもう少し理論的に記載した記事があります。

“ゲームの理論で解く長期的な関係が協力をもたらす理由とは”
http://diamond.jp/articles/-/16099

この記事のポイントは以下の通り。

・1回限りの取引では、互いが「非協力」を選択すると、
合理的に考えれば、その分互いに利益がある
(「非協力」を選択する=Win-Loseを行使する)

・取引が長期(無限)にわたることが前提になっていると、
トリガー戦略(※1)により、協力(=Lose-Win)し続けるほうが、
長期的にみると利益になる。

→長期的関係の維持を前提に考えれば、
部分的にLose-Winであったとしても、
長期的にはWin-Winに近い関係になる。

※1 トリガー戦略

最初に協力し、相手が協力している限り、自らも協力する。
そして、相手が1度でも協力しなければ、
(そこで引き金が引かれ)それ以降、自らも協力しない。

まぁ、ここまで小難しく書かなくとも、
親会社が下請け会社や子会社に対して、
「意のままに動かなければ、もう取引しないぞ」と脅されれば、
長期的関係を続けざるを得ない、というお話でもあります。

コヴィー博士も、その辺に対する理解はあります。

・「お互いの関係を大切に思い、直面している課題がさほど重要でない場合、
 限られた状況においては、相手との関係を維持するためにLose-Winで行動することが、
 妥当なときもあるだろう」

・「Win-Win or No Dealは、商取引やその他の関係が始まる時点において、
 最も現実的なアプローチである。
 しかし継続的な商取引においては、
 取引しないことが現実的な選択肢でなくなることもあり、
 そのことが深刻な問題になることもある。
 特に同族会社や友情を基礎にしてできた企業の場合は、
 そういうケースが多い。」

個人的には、ここに「系列企業」を、
入れるべきではないかと思うのですがね。

余談ですが、コヴィー博士は、
同族会社や友情を基礎にしてできた企業に対してアドバイスをしています。

「私の経験からすると、同族会社や友達同士で会社を設立するときは、
 いつかNo Dealになるかもしれないということを最初から認識して、
 お互いの関係をだめにせず会社が運営できるように、
 そうなった場合における清算の仕方を、
 前もって決めておくことが懸命だと感じている。」

よく「友達同士で起業はするな」と言われますが、
こういうことがなおざりになり、諍いが起こりやすいからですね。
社会起業とて、例外ではありませんよ?

それでもなお「Win-Win」を追及すべきなのはなぜ?

長期的関係であれば「損して得とれ」であれば、
Lose-Winでもいいのではないか、と思いがちですが、

それでもなお「Win-Win」を追及すべき。
とりわけ、ここで中心的に扱っている、
NPOと他組織との協働においては。

それは、以下の理由によります。

(1)長期的関係の維持が難しくなっている
(2)「長期的関係を構築、維持する」のが協働の第一義ではない
(3)そもそも、長期的関係でもWin-Winを追及することは可能

(1)は、いくつかの側面があります。
最もわかりやすいのは「親会社とていつ倒産するかおかしくない」。

「長期的利益が一時的利益より大きい」という保証がない以上、
こうなるとLose-WinよりもWin-Loseのほうが得になる。

「じゃあ、Win-Loseでいいじゃん」という声も出てきそうですね。
企業間競争なら、それもいいのかもしれません。
ただ、それ以外の人間関係でいえば、
長期的関係を維持したほうが得であることが多い。

あと、「組織の異質性が高まった」という点も挙げられます。
先ほどのトリガー戦略とは、要は「裏切り者は絶対許さない」わけで、
その前提として「誰が裏切り者か」を共有する必要がある。

組織の同質性が高いと、誰が裏切り者であるかの情報共有と、
何をもって裏切りとするとかという認識が共有しやすい。

しかし、グローバル化とか、
「みんなちがって、みんないい」的な価値観が普及したりすると、
このあたりに齟齬が出るようになる。

典型的なのは、オリンパス事件でしょう。
あれは「グローバル化による日本的な長期的関係の終焉」という見方も、
できるのではないかと思います。

(2)は、協働の目的論の話です。
別に、長期的関係を結びたいから協働するわけではなく、
そこで、互いに何かしらのメリットを得たいから協働する。

(3)は、Win-Winそもそも論。
Win-Winは、第三の道を模索するあり方なので、
原理的には、長期的関係でもWin-Winを模索することは可能。

次回は、Win-Winに至る道筋について考えます。

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