組織間の壁ができる最大要因は「価値観」

今回は、前回に続き、
協働や業務提携がうまくいかない要因である、

・協働に割ける人材がない
・相手側に提供できるメリットが弱い
・予想よりも「うまみ」が少ない
・「価値観」の相違

このうち、

「予想よりも『うまみ』が少ない」
「『価値観』の相違」

の話をしていきます。
これらは、協働や事業提携の交渉中、
あるいは実施後に出てくる問題になります。

事業提携、協働の「うまみが少ない」ケース

「予想よりも『うまみ』が少ない」ため、
業務提携や資本提携を解消…

一般企業の場合、こうしたニュースが
時々話題に上ります。

「うまみが少ない」とは、
一言で言えば利益が上がらなかったわけですが、

その前段階として、
提携の動機にもなるのですが、
主に以下の状況であるといえます。

・予想以上にシナジー効果が少なかった
・予想以上に信用を担保できなかった
・予想以上に販路が拡大されなかった

シナジー効果(相乗効果)というと、
異なる製品を作るA社とB社が、
同じ仕入れ元で製品を仕入れて、
ローコストで製品を作ることができるようになる、といった事例です。

これが期待したよりも成果が出ない場合、
シナジー効果が少ないといえます。
そもそも、そうやって作ったローコスト製品が売れなかった、とか。

信用の担保というと、
業界大手と組む、というのがよくある事例です。

ただ、組んだ大手が不祥事を起こしてしまうと…
この手の提携はマイナスです。

販路の拡大というと、
商品開発力で定評のあるA社と、
Webでの販売に定評のあるB社が提携するといったパターン。

この場合は、思ったほど売れなかったら失敗、ですね。

NPOで「協働」が語られる場合は、
ほとんどが「シナジー効果」「信用の担保」です。

どちらかといえば、

企業との協働は
 「シナジー効果」を期待してのもので、

 行政との協働は「信用の担保」を期待して、
 という流れが多いようです。

ただ、現在BOPビジネスが注目される中で、
企業側が「販路の拡大」のためのラストマイルを期待して、
NPO、社会起業家たちと事業提携をするケースが増えています。

この場合の「うまみが少ない」は、
企業側は製品が予想より売れないとか、
思ったよりも大変だ(NPO側の要望がきつい、など)といったところ。

NPO、社会起業家側としては、
現地のニーズ(価格面含め)にあった製品ができてこないとか。

「この製品なんか、途上国のこの問題に役立つんじゃないですか?」
といわれても、原価だけでも1万程度するのであれば、
途上国の貧困層には売れません。

「価値観」の相違が一番厄介

しかし、協働、事業提携が失敗する最大の理由は、
「『価値観』の相違」。

企業の事業提携の場合、具体的にはこんな形で現れます。

a.企業文化

例えば……

・スピード感

ベンチャー企業と大企業との事業提携の場合だと、

ベンチャー企業:「走りながら考える」スタイル
とにかくスピードが大事。失敗したらそのつど修正。
現場担当者が意思決定して動く

大企業:「石橋を叩いて渡る」スタイル
失敗しないことが第一義。慎重に熟議を重ねる。
意思決定には複数上司の承認印が必要

…この場合、ベンチャー側がしびれを切らすか、
大企業側が「ついていけない」と判断して、
事業提携解消になるケースがあります。

・会議の優先度:

顧客アポのためなら会議欠席も当たり前か、
会議は原則全員参加で、顧客アポは入れないのが当たり前か。

・業界用語の理解:

同じような業界でも、

「データベース」という言葉ひとつとっても、
特定システムのデータのことかもしれない(Oracle、Domino/Notesなど)。
Excelファイルのことを指しているのかもしれない。
ファイルサーバのデータをひっくるめているのかもしれない。

こうした齟齬が生じます。

ましては異業種となれば、極端な話、

「デフォルト」というのは、IT業界では単なる「初期設定」ですが、
金融業界では「債務不履行」であり、ものすごく深刻な事態です。

こうした思い違いが発生しやすい。

事業提携でなく、資本提携の場合は、
人事制度なども考慮に入れる必要があるため、
大変さはさらに増します。

b.異文化の場合

これは、企業文化の進化系ですね。
まず言語が違い、風習からものの見方、考え方まで、
何もかもが違う。

 「これくらいなら、いわなくても分かるだろう」は、通用しないし、
 契約書をあいまいにすると、何をされても文句は言えません。

NPOや市民活動団体の場合は、上記abに加えて、
以下の要素cが顕著に現れます。

c.パッションの共有が弱い

NPOは、事業の進み方について、
 「パッション(情熱)からミッション(使命)へ」

という言い方がよくなされます。
一般企業の場合も、理屈ではそうなのですが、
現実問題、組織内で創業者のパッションやらミッションが
重要視されているところはまれ。

ただ、NPOの場合は、そこは生命線であるケースが、
少なくありません。

ミッション、パッションと協働の関係について考えると、
ミッションの部分で共有が弱いと、
そもそも協働が始まることすら難しい。

たとえば、「○○町を元気にする」というミッションを共有しあう、
市民活動団体AとBとCがあるとします。

この時点では、ミッションレベルでは協働ができそうです。
あとは、各団体の強みを生かしあえれば、
より生産性の高いミッション実現に向けての活動が可能でしょう。

でも、A団体のパッションは、
「○○町が元気でない根源は、町に大企業が進出したからだ」という怒り、

B団体のパッションは、
「○○町の伝統や文化すべてが好き」という愛着、

C団体のパッションは
「ゆくゆくは○○町にもっと企業や工場を誘致したい!」という野望(?)

こうしてみると、「○○町を元気にする」というミッションは同じで、
たとえ各団体の実際の活動が、例えば町内の美化活動であったとしても、

どこかで感情的な食い違いが出てくるのは間違いない。
特に、A団体とC団体は犬猿の中になるのは、火を見るより明らかですね。

さらに、団体内でもパッションが共有されているとは限らないわけで、

A団体内にB団体のパッションを
持ってる人だっているでしょう。

その場合は「いや、伝統とかは別にいいから」「何だとぉ!」となりがち。

まして、A団体内にC団体のパッションを持ってる人がいたら、
対立は決定的になるでしょう。
最悪は内ゲバですね。

※「内ゲバ」とは、組織における暴力的な粛清行為、
もしくは分派闘争による武力衝突をさします。

余談ですが、「内ゲバ」なんて1970年代学生闘争当時に出てきた、
いわば「死語」なのですが、

今後の脱・反原発運動の中で、
「内ゲバ」が再登場してくるんじゃないかと、
個人的には危惧しています。

こうしてみると、組織間のタコツボ化を超える、というのは、
けっして楽なことではないことが、実感できると思います。

そうなると、

「世界を変えるというけれど、
 それは言葉のあやであって、
 実際は自分の範囲、領域内の改善なんだけど、
 それでいいじゃん」

という流れに傾きがちです。

確かに、自分の範囲、領域内の改善だけでも、
その当人にはしんどい。
それ以上を望むのは、酷なのかもしれません。

何より「自分たちだけで活動したい」と思っている人に、
協働や事業提携を求めることは無理でしょう。

次回は、「市民活動団体、NPOのタコツボ化」について、
別の側面から考えます。

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