CSVの疑問及び今後の課題 -2-

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今回からは「CSV」という考え方の、
疑問及び今後の課題を取り上げてみたいと思います。

「CSV」とは「Creating Shared Value(共通価値の創造)」の略。

個人的に考えられる、CSVの疑問及び今後の課題は、次の5つ。

(1)「CSV=多国籍企業(大企業)」なの?
(2)企業とNPO、社会起業家との協働は簡単か?
(3)輸送コストと現地生産、どちらが安い? 
(4)消費者が品質よりも安さを重視した場合、
   調達段階で買いたたく行為は止められないのでは?
(5)CSVとグローバリゼーション

今回は「(2)企業とNPO、社会起業家との協働は簡単か?」について、
考えてみることにします。

現実はやっぱり甘くない

まずは、次の文章をみていただきましょう。

「途上国や新興国の政府はつきあい方も難しく、多様なテクニックと長年の経験が必要になる。
 外国企業がその国と今後どうつきあっていくかを考える際、
 比較的つきあいやすい現地発の社会起業家たちの動きを把握すれば、
 社会インフラの現状と成長、そして自社にとっての好機を見逃さないようにできる、
 と考えるのも当然かもしれない。」

「これを機に、多くの企業が新興国の社会起業家、ソーシャル・ベンチャーへ、
 協働事業や投資等の形態で実利を生み出そうと殺到していく。」

(ダイヤモンドオンライン・Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線
http://diamond.jp/articles/-/15587?page=4

要は、社会起業家は「現地を良く知る優秀な手駒」としての役割を期待された

というわけですね。
まさにCSV的な協働のありかたといえます。

しかし、現状は甘くない。

「実際に『ネクスト・マーケット』が書かれてから10年以上経ったいま、
 成功事例として上げられたケーススタディのうち、
 今もまだ『成功している』と呼べる事例はわずかだと言われている。

 また、ハーバードビジネスレビューで取り上げられた、
 多国籍企業が現地のNGOを活用した事業開発の事例も、
 事業拡大や規模の経済の問題に悩んでいるのが現状だ。」

(ダイヤモンドオンライン・Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線
http://diamond.jp/articles/-/15587?page=4

最後の一歩が果てしなく遠い

なぜ現実はうまくいかないのか。
Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線によると、

「ラストマイル、つまり農村部やインフラの行き届いていない都市部の低所得層地域(スラム)で買う場合、
 都市部で同等の商品やサービスを買う時よりも、高い値段を払うことになる。
 この不平等は、幹線道路が行き届いていないが故に起こる。

 まずこの問題を解消するためだけでも、
 物流や規模の面でコストダウンや革新が必要になる。

 だが、さらに正しい商品を適切なタイミングで届けて行くためには、人的ネットワークがない、
 優秀な人材が育っていない、という人的要因も重なってくる。
 最後の1マイルが非常に難しく、最後の1センチがさらに難しい。」

とあります。

インフラと現地の人材育成、人的ネットワークが、現実問題として難しい

「人材投資」を社会起業家と共に行う覚悟が企業側にあるか?

結局、企業と社会起業家との協働がうまくいっていないことが大きい。

「残念ながら、末端の人材投資に関しては、海外から来た企業が出来ることは少ない。
 そこを補完するのが社会起業家たちだ。

 だが、その彼らの先行投資に便乗しようとするのか、
 それとも投資を分担し共に創って行こうとするのか、というマインドセットの違いが、
 協業の成功の鍵を握ることになる。」

先行投資に便乗する、というのは、
 わかりやすく考えれば、社会起業家を「現場セールスマン」とみなすことでしょう。

「はい、うちの商品を現場で売ってきて。
売ってきたらマージンあげるから。あとはよろしく。
あんたたちは、現場とパイプがあるんでしょ?」

ただ、ラストマイルの考え方からすればわかるように、
 「現場セールスマン」は社会起業家ではなく、あくまで現場の人
社会起業家は、現場のニーズにあった教育や、
ニーズを掘り起こす作業を行っていることが多い。

要は、現場の人を育成する「人材投資」が最大の問題。
企業側も、結局は人材だということはわかってはいるけれど、
そこには多大なカネが発生することはわかる。

(自分自身が一人前になるために会社が払ったであろう費用を考えても、それはわかりますよね?
しかも、BOPビジネスの場合、相手は最低限の教育も受けていない)
だからホンネとしては、人材については社会起業家に丸投げしたい。

それに対して、投資を分担し共に創っていくというのは、
 人材投資についても、共に協力し合おうという考え方。

現実問題、長続きしない協働の原因は、

「『人財投資』の必要性を先進国企業が十分に認識せず、
 そこへの投資を負担していない場合や、
 それが原因でパートナーとなる社会起業家との信頼関係を
 十分に構築できていない場合によく起きる。」
http://diamond.jp/articles/-/15587?page=7

「仮面夫婦」「同棲」でもいいんじゃない?

「欧米の多国籍企業の中にも、パートナー選びに悩み、パートナー解消を繰り返しているところも多い。
 一方で、現地の社会起業家たちも学び始めている。
 先進国から資金や技術をちらつかせて近寄ってくる企業に対しても、
 細心の注意を払いはじめている。」
http://diamond.jp/articles/-/15587?page=7

人材投資に関心なく、売り上げだけを求める企業と、
資金や技術協力はエサで、結局は営業ノルマだけ求められる社会起業家。
そんな関係は、当然長続きしないでしょうね。

ま、別にそれでいいんじゃね? なんて声もあります。

「これは仮面夫婦だと割り切る考え方もある、とインドの社会起業家が話しているのを聞いたこともある。
 仮面夫婦期間に必要なノウハウやリソースを吸収して、
 お互い必要ないと感じたら別れればいい。」
http://diamond.jp/articles/-/15587?page=7

「それだったら、『仮面夫婦』じゃなくて『同棲』ではないか」

と竹井善昭氏がツイッターでつっこんでましたが、
個人的には、両方のケースがあるだろうとおもいます。

上記のケースは「同棲」ですね。
もっと詳細にいえば、「バツイチの母親との同棲」。
子どもを案じる母親が社会起業家で、子どもは現地の受益者。

まず、「同棲」の場合だと、

・短期間のつきあいが多い。だらだらと関係がつづくケースもある
・お互いが必要なくなったら(双方のメリットが少なくなったら)さっと別れる

「仮面夫婦」の場合だと、
子どもを溺愛する妻(社会起業家)とその夫(企業)、的な感じ。

・当初のお互いのメリットは薄れ、関係は冷めている。
企業側は、思ったほど利益は得られない
社会起業家側は、活動が理解されず、協力は限定的。しかもノルマも?

・企業側は「社会貢献してるPR」としての世間体を気にしたつきあい、
社会起業家側は「それでも多少の金銭支援がある」という金目当てのつきあい

ま、個人的にはそれはそれでいいとは思います。
子ども(現地の受益者)が困らなければ、の話ですが。

「良い父親」たることは難しい

ただ、子どもにとってみれば、
お小遣いだけたくさんくれる父親も確かにいいんだろうけど、

やっぱり、関心をもってくれて、同じ目線に立ってくれて、
時には叱ってくれる父親の方がいいんじゃないか。
そうすると、父親のことを尊敬して、支えてくれるようになるんじゃないか。

つまり、企業のイメージが高まって、
その分、商品をいつも使ってくれるようになるんじゃないか。
それはすなわち「差別化」につながるんじゃないか。

そんなわけで、

「遠回りであっても、人財投資をすべきなのかどうか。
 すべての会社が同じ戦略を取るべきだとは決して思わないが、
 一考し、自社としての優先順位を決定し、
 その方針に則りどこまでのコミットメントができるかを考える価値がある。
 そしてその思考プロセスを、関わる社員たちが共有し、納得していることも重要なのだ。」
http://diamond.jp/articles/-/15587?page=8

これを企業側がかみしめていないと、
CSV的な協働は、たぶん思ったほどの成果はあげられないのでしょう。

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