現代版三方よし・CSV論 -9-

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しばらく、「CSV」という考え方について紹介していきます。

「CSV」とは「Creating Shared Value(共通価値の創造)」の略。
資料として用いるのは、
『Diamondハーバード・ビジネス・レビュー(以下「資料」と表記)』の2011年6月号。

今回は、CSVの2つの前提条件についてふれます。

◆CSVの前提条件1:法的責任は前提

2011年12月で、またCSRがちょっと注目されました。
オリンパス事件や大王製紙事件です。

こうした「企業の不祥事」が起こるたびに、

「企業は、CSRなんて免罪符にうつつを抜かしていないで、
コンプライアンスを遵守すべきだ」

なんて意見が出てきます。

教科書的に言えば、コンプライアンスといった法的責任は、
消極的CSRの前提なので、
不祥事を犯しちゃってる時点で、CSRから逸脱してるんですけどね。

それはともかく、CSVの3戦略に、
法的責任について触れられていなかったので、

「ポーターは、企業はコンプライアンスを遵守しなくてもいい、と言いたいのか?」

という勘違いをした人も、
ひょっとしたらいるかもしれません。
もちろん、そんなわけはありません。

ポーターも、

「共通価値の創造では、法律や倫理基準を遵守しつつ、
企業が引き起こした害悪を緩和することを前提とする」(P24)

と指摘しています。

CSVの前提条件2:自社事業と密接に関係し、かつ重要となる領域

CSVの3戦略をみれば、このことは理解できると思います。

「そのような領域であれば、経済的メリットがあるため、
おのずと息の長い取り組みとなるだろう。
しかも、企業が最も多くの資源を傾ける領域であり、
また、その規模と市場での存在感から、
社会問題に有益な影響を及ぼすことのできる領域でもある」(P24)

共通価値の創造にいち早く取り組んできたのは、社会起業家

ポーターは、

「皮肉なことに、共通価値の創造にいち早く取り組んできたのは、
概して発展途上国の社会起業家や企業-資源の面で制約がより大きい-であった。
実際、その具体的なチャンスを発見してきたのは、これらアウトサイダーであった」(P24)

と指摘しています。
個人的には、別に「皮肉なこと」でもなんでもなく、
いつも新しいチャンスを発見してきたのは、アウトサイダーですしね。

ポーターは、社会起業家について、

「彼ら彼女らは、古くて狭い思考でビジネスを考えたりしないため、
既存企業の機先を制し、このようなチャンスを発見することが多い」(P23)

と評価しています。
そして、

「新の社会起業の精神は、生み出した社会的便益だけでなく、
共通価値を創出する能力によって測られるべきである」(P23)

とコメントしています。

そして、

「営利組織と非営利組織の区別はあいまいになっている」(P24)

と指摘しています。

CSVに必要なのは、明確な評価指標と高次元のコラボレーション

CSRのときから言われてきたことではあるのですが、
CSVにおいても、

「これら三分野に関する具体的な評価指標を事業部門別に用意する必要がある」(P27)

と、ポーターは指摘しています。

CSVにおいては、

「具体的に、どれだけの社会課題が解決したのか? どれだけの害悪を削減できたか?」

という社会的影響だけではダメで、

「そのことによって、結果的にどれだけ儲かったか? コスト削減につながったか?」

という経済的利益を結びつけることが必要ですが、

「社会的影響と経済的利益を事業として結び付けている企業はまだまだ少ない」(P27)

のが現状です。

また、ポーターは、

「共通価値の創出には、高次元での新たなコラボレーションが生じることだろう。
企業の力だけで事足りるチャンスもあるが、
営利と非営利、官と民間両方の知見やスキル、資源が役に立つ場合もある」(P27)

と指摘しています。

まぁ、NPO業界ではよく叫ばれている「企業とNPOとの協働」ですが、
従来ままあった、

「企業のイメージアップのためにがんばるから、お金ちょうだい、ぷりーず♪」

的な協働ではなく、共通価値の観点から協働を見直そう、ということです。

また、

「自社の評判のために実施するCSRプロジェクトではお目にかかれないものだが、
競争を始める前にライバルと手を組んで、その地ならしをする必要もあるだろう」(P29)

と、企業と企業との協働も指摘しています。
まぁ、クラスターを形成するとなると、当たり前なんですけどね。

なんか、「企業同士で手を組むって、それって談合? カルテル? あーダメダメ。」
という狭いものの見方をする人もいそうですが、
そうしたものの見方を取っ払う必要もありますね。

まとめとして、

「優れたコラボレーションとは、データ重視で、
個々の具体的な成果の関係を明らかにし、
ステークホルダー全員の目標と結びついており、
明確な評価指標によって測定される」(P29)

としています。

「いや、それが難しいから困ってんだよ!」

という声も、当然出てきますが、
逆にいえば、それに成功したところが、
共通価値の創造競争においての勝者となれる、ということなのでしょう。

次回は、規制(法律)と共通価値についてふれます。
何かと話題になるテーマですね。

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