現代版三方よし・CSV論 -8-

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しばらく、「CSV」という考え方について紹介していきます。

「CSV」とは「Creating Shared Value(共通価値の創造)」の略。
資料として用いるのは、
『Diamondハーバード・ビジネス・レビュー(以下「資料」と表記)』の2011年6月号。

今回は、共通価値の創造戦略の3番目である
「地域社会にクラスターを形成する」についての話をします。

クラスターとは、

「特定分野における関連企業、専門性の高い供給業者、サービス提供者、
関連業界に属する企業、関連機関(大学、規格団体、業界団体など)が地理的に集中し、
競争しつつ同時に協力している状態」をいいます。

ポーターは、クラスターがある地域について、

「クラスターを構成する条件に欠陥があると、
企業に内部費用が生じる。

公的教育の質が悪いと、生産性や再教育に関わるコストが発生する。
輸送インフラがお粗末だと、ロジスティックスのコストが増大する。
男女差別や人種差別があると、優秀な人材が集まりにくい。
貧困によって製品需要は限られ、環境の劣化、労働者の健康障害、
セキュリティコストの増加が招かれる」(P22)

こうした欠陥を改善するように投資を行うと、
長期的にはその利益を回収できる、というわけです。

もちろん、企業だけでなく地域社会にとってもWin – Winです。

具体例としては、以前も紹介した「ネスプレッソ」の他に、
世界最大の無機肥料メーカー、「ヤラ・インターナショナル」が
紹介されています。

アフリカの大部分の地域では、ロジスティックスが未整備のため、
農民が肥料などの必要資源を入手したり、
作物を市場に運んだりしようにも、非効率極まりない。

同社では、モザンビークとタンザニアに回廊地帯
(都市間を結ぶ細長い人口密集地帯)をつくるために、
港湾と道路の整備に6,000万ドルを投資。

ノルウェー政府の支援の元、現地政府といっしょに
このプロジェクトに取り組んでいます。

これにより、モザンビークだけでも20万の零細農家がこの恩恵に浴し、
35万人の雇用が創出されると見込まれています。

当然、これだけ農家が発展すれば、肥料の消費も増えるわけで、
同社の利益も大幅アップするでしょう。

先進国の事例では、ノースカロライナ州にある最先端研究機関
「リサーチ・トライアングル・パーク(RTP)」が紹介されています。

ITや生命科学などの分野でクラスターを形成したことで、
官民共同で共通価値を創造した顕著な例だそうです。

(ただ、なぜRTPが成功して、
他の産学官共同プロジェクトが失敗するのか。
そこが書かれていないので、腹に落ちないところではあります。)

いずれにせよ、地域社会にクラスターを形成するには、

第一に

「ロジステッィクス、サプライヤー、流通チャネル、教育、取引所、教育機関などの
欠陥や不備を明らかにする必要がある」

続いて、第二に

「自社の生産性と成長において、
最大の制約になっている弱点に焦点を当て、
みずから直接取り組むべき領域と、
協働したほうがコスト効率の高い領域をすみ分ける」(P23)

共通価値を創造するチャンスが大きいのは、もちろん後者です。

企業の足かせとなっている、クラスターの弱点に対処することは、
地域社会向けのCSR活動よりずっと効果的である、
とポーターは述べています。

当然、一企業単独でできるわけではなく、

「業界団体、政府機関、NGOのみならず、
民間部門の同業他社と協働する必要がある」(P24

とポーターは指摘します。

次回は、共通価値の概念から見た社会起業家の役割、
営利と非営利活動の境界があいまいになっていくといった、
話をしていきます。

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