現代版三方よし・CSV論 -7-

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しばらく、「CSV」という考え方について紹介していきます。

「CSV」とは「Creating Shared Value(共通価値の創造)」の略。
資料として用いるのは、
『Diamondハーバード・ビジネス・レビュー(以下「資料」と表記)』の2011年6月号。

今回は前回に引き続き、共通価値の創造戦略の2番目である
「バリューチェーンの生産性を再定義する」についての話をします。

流通

事例として挙がっているのは、
ヒンドゥスタン・ユニリーバ。

同社では

「インドの人口2000人足らずの集落に訪問販売システムを導入した」(P20)

そうです。

たった2000人程度で、当然都心からも遠い。
通常であれば、そんなところは切り捨てたくなるところ。

で、このシステムで訪問販売しているのは、
ユニリーバの社員ではなく、
「経済的に恵まれない女性起業家たち」

「彼女たちは、同社が用意したマイクロファイナンスを利用したり、
研修を受けたりできる。」

「これまで45,000人以上の女性起業家たちが、
15の州で約10万の村々をカバーしてきた」(P20)

要は、ヤクルト販売のおばちゃんたちを連想すると、
イメージしやすいのではないでしょうか。
あれのインド版。

ユニリーバは衛生用品を売ってるので、

「世帯所得を倍増させるスキルを女性たちにもたらしただけでなく、
衛生製品を普及させ、感染症の拡大を抑止している」(P20)

ちなみに、資料には出ていませんが、
ヤクルトもインドでがんばっています。

なお、この流通システム(通称「プロジェクト・シャクティ」)は、

「同社のインドにおける総売上高の5%を占めており、
農村部地域へのさらなる進出を促し、
またラジオやテレビのない地域において
ユニリーバ・ブランドを広め、
大きな経済的価値をもたらしている」(P20)

このことは、付記しておくべきでしょうね。

従業員の生産性

「生活賃金(一定以上の生活に必要な最低賃金)、
安全、健康、教育研修、昇進機会が生産性にもたらす
プラス効果が認識され始めている」(P20)

と資料では記載しています。

生産性というと、さまざまな意味合いを含んでいますね。
モチベーションとか、時間管理とか……

従業員の生産性については、過去このコーナーでも、
取り上げています。

・ES(従業員満足度)が低い企業は社会貢献以前の問題
http://www.psonic.org/archive_whatcbsb/no18/

・アメとムチは、多くの場合やる気を削いでいく
http://www.psonic.org/archive_whatcbsb/no19/

資料では、事例として「健康」に着目しています。

「業界を代表する企業は、従業員が健康を害すると、
欠勤や生産性の低下が生じ、
結果的に健康保険料よりも高くつくことを理解している」(P20)

例としてJ&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)の取り組みが紹介されています。

「同社では、従業員の禁煙支援をはじめ、
さまざまな健康増進プログラムを実施した結果、
医療費を2億5000万ドル削減することにした」

「これは、2002年~2008年で見て、
健康関連支出1ドルにつき、
2ドル71セントのリターンがあった計算である」

「さらに、従業員の欠勤が減り、
生産性が向上するというメリットにもあずかることになった」(P20)

日本流にこの事例を応用すれば、健康増進に加え、

「残業抑制による残業費削減」
「サービス残業禁止による過労死撲滅」とかになるんでしょうかね。

ちなみに「カロウシ」は、
欧米ビジネスマンにも通じる言葉になってるようです。
日本特有の現象として、ですけどね。

世界のジョークで、アリとキリギリスの各国版というのがあるんですが、
オチ(?)は日本で、

「日本だと、アリもキリギリスもカロウシする」

だそうですよ。

ロケーション

前回の「エネルギーの利用とロジスティックス」にも
重なる部分があります。

先進国では…

「ウォルマートは、食品部門用の農作物を、
倉庫に近い地元農家から調達しているが、さらに増やしつつある。
輸送コストを削減し、いま以上の小ロット(製品単位)で補充できれば、
遠方の工業農場から廉価で購入するよりも安いことがわかったからである」(P21)

途上国では…

「カシューナッツの大手生産業者オーラム・インターナショナルは
これまで、アフリカからアジアに運び、生産性の高いアジア人労働者に
その加工を委ねていた。

しかし、(中略)原産国に工場を建設し、
現地の労働者を教育することで、
加工と輸送にかかるコストを25%削減した。
二酸化炭素の排出量が大幅に減ったのは言うまでもない」(P21)

ぱっと見、これまでのやり方がかなり面倒だったのでは?
と思ってしまいますが、

そのへんは、植民地時代のなごりなのかもしれませんね。
「原住民を教育なんでできない」くらいの思い上がりが、
あったのかもしれません。

いずれにせよ、ポーターは

「いままで多くの企業が、グローバル化とは、
最も人件費の安い地域に生産拠点を移転し、
すぐさま支出を抑えるようなサプライチェーンを
設計することであると考えていた」

現にこう考えている企業もまだまだ多いですね。

「しかし現実には、重要な地域に深く根をおろした企業が、
優れた国際競争力を獲得できる」(P21)

と結論付けています。

次回からは、共通価値の創造戦略の3番目である
「地域社会にクラスターを形成する」についての話をします。
お楽しみに!

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