現代版三方よし・CSV論 -3-

今回からしばらく、「CSV」という考え方について紹介します。

「CSV」とは「Creating Shared Value(共有価値の創造)」の略。
資料として用いるのは、
『Diamondハーバード・ビジネス・レビュー(以下「資料」と表記)』の2011年6月号。

前回のおさらい ~経済効率と社会の進歩はトレードオフか~

「経済効率と社会の進歩の間には、トレードオフが存在する」

いいかえれば、

「よりよい社会を作るためには、企業にある程度自粛させるようにしないといけない」

という考え方が、経済学、とりわけ新古典経済学では主流です。

その例としてポーターも資料で記載しているのが「外部性」の概念です。

 

外部性について

この文脈で語られる外部性は、
厳密に言えば「負の外部性(外部不経済)」になります。

Wikipediaの説明をもとに、この概念を簡単に考えてみます。

たとえば、広島から岡山まで行くのに、
JR在来線を使う方法と、車を使う方法があるとします。

JRを使っても、車を使っても、
利用者はともに3,000円を支払うとします。

しかし、一見同じ3,000円であっても、
それぞれの重みが違うのです。

JRの場合、運賃3,000円には、

軌道や車両の敷設・購入・維持管理から、
走行にかかるエネルギー・駅設備や
乗務員の雇用・教育などにかかる費用といったものが全て含まれます。

しかし、車の場合3,000円には、
ガソリン代(あるいは車の維持費)のみ。

走っている道路や信号機等の維持管理にかかる費用
および排気ガスによる大気汚染の結果、社会が払うことになる費用(医療費とか)の
負担は、直接的には含まれていません。

このように、利用者、受益者が負担を免れる費用を「外部費用」といいます。

さて、そんなJRと車で単純に価格競争が実施した場合、
自動車の方が費用負担が過少になることから、
市場原理の下では後者の利用(生産)が増大します。
払うべきコストが少ないから、当然ですよね。

でも、道路の維持管理にかかる費用や、大気汚染により健康を害した人の損失などは
社会全体や第三者が負担することになります(これらを社会的費用という)。

そのため、社会全体で見た場合には、
列車利用が増加した場合に比べ効率が悪くなってしまうことになります。

そうならないように、たとえば自動車税や排気ガス税をとったりして、
外部費用分を自動車の利用者や自動車会社にも負担させる。

これを「外部費用の内部化」といいます。

長ったらしくなりましたが、要は、

罰則や税金によって、
企業が社会全体からみて、不当に儲けないように(外部費用も考慮できるように)
する必要がある、というのが外部性の考え方です。

外部性理論の問題点

外部性理論は、確かに公正な社会を作るのには貢献してきましたが、
この考え方は、

「企業は儲けるもの、それに歯止めをかけるのは政府」

という考え方が前提にあります。

結局、

「多くの企業が、損得を勘定するにあたって、社会や環境への配慮を除外してきた(P12)」
「そして、社会問題の解決は、政府やNGOの手にゆだねてきた(P12)」

といった風潮を助長することになります。

共通価値の概念ではどう考える?

ポーターは、共通価値の概念について

「共通価値の概念は、従来の経済的ニーズだけでなく、
社会的ニーズによって市場は定義されるという前提に立っている」(P12)

と説明しています。

先ほどのJRと車の例でいえば、

「安く目的地まで行きたい(経済的ニーズ)」だけでなく、
「子供の健康にためにも、より環境に優しい交通機関を使いたい(社会的ニーズ)」によって、

市場は定義されている、ということになります。

また、外部費用の内部化についても、

「企業にとってコスト増になるとは限らない。
なぜなら、企業は、新しい技術、あるいは業務手法や経営手法を通して
イノベーションを生み出せるからであり、
その結果、生産性を向上し、また市場を拡大できる」(P12)

と説明しています。

要は、外部費用を内部化することをコストと考えず、
これをイノベーションのチャンスにしろ、と言っています。
そして、市場が社会的ニーズによっても定義されている以上、
それも市場の要請なんだ、ということになります。

また、市場、あるいは利害関係者にとっては、
企業が生み出した価値を内部化ではなく「再分配する」要求が
出てきがちです。

ポーターの例に出ているのは、フェアトレード。
「不当に作物を買い叩かずに、もう少し高く買えよ」というのは、

「創造された価値全体を拡大するものではなく、主に再配分する」(P13)

行為であるといえます。

そうではなく、「経済的価値と社会的価値を全体的に拡大」するのが共通価値だと、
ポーターは言っています。

フェアトレードの例で則していえば、

・作物の育成技術の改善
・サプライヤーなどの地域クラスターの強化

これによって、農家と企業両方がWin – WInになれると説きます。

まぁ、いまや作物の改善などもフェアトレードには当然含まれてるんですが、
例としてはこういうことです。

次回は、共通価値のルーツについての話をします。

もうしばらく、概念的な話が続きますが、
ご容赦ください。

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