現代版三方よし・CSV論 -1-

今回からしばらく、「CSV」という考え方について紹介します。

「CSV」とは「Creating Shared Value(共有価値の創造)」の略。
企業の競争戦略論の大家であるマイケル・ポーター米ハーバード大学教授が、
新たに提唱した概念です。

ポーター教授は、以前から「戦略的CSR」という提言を行ってましたが、
CSVは、それを深化させた概念といえます。

ざっくりいってしまえば、「CSV」とは、
以前紹介した「CSR3.0(儲けるCSR)」を実践するための戦略論といえます。

このCSVについて、もう少し掘り下げて考えていこうと思いますが、
その前に、

 「そもそも、なぜCSVが必要なのか?」
 「なぜ、CSRではなくCSVなのか?」

を先に考えてみたいと思います。

これらの背景となるのは、次の3つです。

(1)企業悪玉論(ほっとくと企業は何してかすかわからん!)
(2)CSRは必要ない(企業の社会的責任は利益の最大化のみ)
(3)CSRには「守り」のイメージがつきまとう

(1)は、企業の不祥事が相次ぐ中では、わりとオーソドックスな意見
ヨーロッパでは、特にこの傾向が強い、といわれています。

(2)は、ミルトン・フリードマンとか、経済学者を中心に、これもオーソドックス
企業に道徳を押し付けるな! という自由主義としては、アメリカ的ではあります。

ただ、よくみると(1)と(2)って、
「卵が先か鶏が先か」式の構造にみえます。

「企業は何をしてかすかわからん!」という人がいるから、
「企業は利益の最大化を通してこんなに役に立ってるんだ!」と反論するのか、

「企業の社会的責任は利益の最大化だ!」という人がいるから、
「そんなことを言ってるから、企業はほっとくと何しでかすかわからん!」となるのか。

どっちが先なのかは、なかなかいえませんが、
少なくともいえるのは、

 「(1)(2)の主張の帰結として、コンプライアンス不況(官製不況)が強化される」

という点です。
とりわけ、この日本では。

多くの人が「企業は何をしてかすかわからんから、規制すべきだ!」と叫び、
かつ(2)のCSR批判派も、
「企業の私益と社会の公益を釣り合わせるには、政府の規制が必要」と説くと、

そこから、必然的な傾向として、
「企業が何かしでかすたびに、規制を強化しよう!」

となる。
このことは一見いいようにみえるけれど、

・もともとの法律自体が社会、経済の現実に合っていない場合、
 改正によりさらに現実と乖離する可能性がある

・規制強化自体が、経済学的には「コスト」なので、
 そのコストが消費者に跳ね返る(合成の誤謬)

といった弊害もあります。

「悪いことをする人は、確かに、悪いことをしにくくなったが、
 良心的に行動する人も同じように、いいことがしにくくなった」(竹中平蔵氏)

といえそうです。

官製不況は、日本では特に強化される社会構造になってますが、
アメリカでもちょっとはありそうですね。
法律の力が弱い国だと、影響は薄そうです。

コンプライアンス不況が叫ばれるたびに、
三方よしも同時に叫ばれる傾向があるのも、
こうした弊害ゆえといえそうです。

CSRだと、法令遵守をうたっています。
この「法令遵守」を単なる「企業不祥事のための保険料」と解釈してしまうと、
企業内でコンプライアンス不況になります。
CSR不要論派にとっては、格好の事例となるわけです。

「じゃあ、法令を守らない企業がいいのか?」と言ってるわけじゃなく、
コンプライアンスを、「法令の背後にある社会の要請に応えること」と
捉えることが大切です。

日本では、三方よしのほうが、そう受け止められやすい傾向にあるため、
三方よしが注目されている、といえます。

コンプライアンス不況について詳細は、こちらをどうぞ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20080623/163435/?P=1

あと、(3)について。

一般的には、CSRの「経済的責任」「法的責任」が守りのCSRで、
「倫理的責任」「フィランソロピー的責任」が責めのCSRと言われますが、

CSRについて別の見方をすれば、
「企業の免罪符としてのCSR」という見方をする向きもあります。

「JTが分煙や、すいがらを含むごみ拾いを推進するのは、
自分たちが、たばこという健康によろしくないものをつくってることを、
少しでも免罪してほしいから。」

「本業で多少あくどいことやってても、CSRやってれば少しは免罪されると思ってんじゃね?」

まぁ、ここまでくれば典型的な企業悪玉論ですが、
ここからいえるのは、

「CSRが本業と関係ない限り、何をやっても守りとみなされる」

という傾向がある、ということです。

いずれにせよ、CSRという言葉には手垢がつきすぎているので、
上記の問題を包括した上で、新しい概念を提唱したほうが手っ取り早い、
と考えるのは、戦略的にアリだと思います。
さすがポーターさん、戦略論の大家だけある。

ま、個人的には「三方よし」はCSRほどは手垢はついてないと思うので、
CSVの概念を継承、発展させて、
「現代版三方よし」とでもして広めるのもありかと。

そんなわけで、次回から、
「現代版三方よし」CSVについて紹介します。

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