ソーシャルイノベーション考 ~『社会イノベータへの招待』編~ -5-

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社会起業の「革新性」について、
『社会イノベータへの招待』をベースに、
「ソーシャルイノベーション」について考えるシリーズ。

今回は、前回に続いて、プラットフォームについてふれます。

プラットフォームは単にオープンで自由度が高ければいいというものではなく、
適切な制約と誓約が必要だというお話です。

プラットフォームは、誓約と制約によって
多大な成果を生み出すことができる

社会イノベーションのための
プラットフォームを作る上での要素について、

『社会イノベータへの招待』では、
オープン度(自由度)の観点から考えています。

このように書くと、

「やっぱり、オープンで自由度が高い方がいいよね」

となりがちですよね。
オープンイノベーションという言葉もあるくらいですし。

ただ、興味深いことに
『社会イノベータへの招待』では、

 何でもオープン、自由にすればいいというわけではなく、
 オープンとクローズドのバランスが大切なのだと指摘しています。

「創発的なプラットフォームづくりを考えるうえで、しばしば浮上する課題が、
オープン性(自由度の高さ)と、制約(自由度の制限)との関係を
適切に設計する必要性である(P66)」(色は筆者)

「人々の協働は、その組織化に際して
適切な制約があるほうが活性化すると言えるのではないか(P66)」(強調筆者)

では、「適切な制約」とは何か?
それは、以下の2通りの考え方があるのではと思うのです。

(1)組織外部の制約
(2)組織内部の誓約

組織外部の制約とは、いわば法律や制度といったもの。

『社会イノベータへの招待』では、たとえとして、
NPO法という制約を受け入れることで、
NPO法人は逆に社会への信頼度を高めたと指摘しています。

「NPO法を制定したことで、
NPOが守らなければならない制約を規定したわけだが、

これによって逆にNPOが社会的に認知され、
今日では広く社会に浸透するまでになっている。(P67)」

組織内部の誓約については、
『社会イノベータへの招待』では直接の記述はないですが、

組織のビジョンやミッション、
およびそれに付随する制約一般になるのでしょう。

というより、NPOなんかでは、
ビジョンやミッションに共感し、それを受け入れているから、
メンバーになっている。

言い方を変えれば、ビジョンやミッションに対して、
誓約しているともいえる。

まとめると、

「プラットフォームは、誓約と制約によって、
単なる人の寄せ集まりを超えて、
集団をまとめ、多大な成果を生み出すことができる。」

ということになるのでしょうか。

誓約と制約は諸刃の剣

プラットフォームが効果的に働くには、
誓約と制約が必要だというのであれば、

いっそのこと、オープン性なんて考えずに、
誓約と制約を厳しくすれば、集団はまとめられるんじゃない?

……ぶっちゃけ、「集団をまとめる」という観点に立てば、
誓約と制約をうまく使えば、驚くほど効果的に集団をまとめられる。

いくつかの有名な心理学実験によって、
そのことがわかりやすく(?)示されています。

たとえば、スタンフォード監獄実験
これは、看守と囚人という役割に起因して発生する、
一連の誓約(看守は囚人に絶対服従)や制約(服装や空間など)で、
人は簡単に役割に順応してしまう。

この実験をベースにした映画もあります。

もっともこの場合の事例にふさわしいのは、
サードウェーブ実験でしょうか。

要は、アメリカの学校のあるクラスにて、
「自分たちはファシストにはならない」といった子供たちに対して、
一種の社会実験として、厳格な誓約と制約を与えたところ、

数日でクラスは驚くほどまとまってしまい、
結局、厳格な誓約と制約によって、
人は(とりわけ子供たちは)簡単にファシストになってしまうことが証明された。
そういう実験です。

この実験をベースにした映画もあります。

ただ、一連のヤバイ心理学実験やファシズムを挙げるまでもなく、
誓約と制約には、運用を間違えると集団や外部社会に対して、
甚大な悪影響を与えるリスクがつきまといます。

その点では、誓約と制約は諸刃の剣ではある。

そもそも、プラットフォームのそもそもの定義が、
「多様な主体の間で協働を成立させる技術や組織的基盤」であって、

誓約と制約がガチガチすぎると、
そもそもよそ者は入れなくなってしまう。

「適切な」誓約と制約の基準は?

プラットフォームは、オープンにすればいいというものではなく、
適切な誓約と制約が必要になる。

誓約と制約が強固であればあるほど集団をまとめあげられるが、
集団の暴走を招きかねないというリスクがある。

じゃあ、「適切な」誓約と制約の基準は、
どこに設けるべきなのか?

それは結局、「どういうプラットフォームを築きたいのか?」に、
かかってくるのでしょう。

地域コミュニティ内部を強化するためのプラットフォームであれば、
厳しめの誓約と制約が効果的なのかもしれません。
ムラの掟とでもいったほうがわかりやすいでしょうか。

とはいえ、一般的には、
いろんな人を巻き込みたいのがNPO法人情でしょう。

ただ、どんな人間も歓迎する、なんてことはありえない。
少なくとも、ビジョン、ミッションに賛同していることは必須。

逆の言い方をすれば、

そうしたビジョン、ミッションに賛同している人間、
ともすると、ええかっこしぃとか意識高い系とか揶揄されそうな、
そんな人間にとっての居場所を提供するのも、
プラットフォームの一つの役目といえます。

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