ソーシャルイノベーション考 ~『社会イノベータへの招待』編~ -4-

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社会起業の「革新性」について、
『社会イノベータへの招待』をベースに、
「ソーシャルイノベーション」について考えるシリーズ。

今回は、前回に続いて、プラットフォームについてふれます。

前回、プラットフォームに求められる機能について、
以下の3つのうち、(1)についてふれました。

(1)共通インターフェースの提供
(2)価値醸成(「信用醸成」のほうがニュアンスとしては近い)
(3)インセンティブ付与

今回は、その続きになります。

「信頼」がプラットフォームの大前提

『社会イノベータへの招待』によると、

プラットフォームに求められる機能のカギとなるのは、
「信頼」なのだそうです。

「プラットフォームを使うことで信頼が醸成されるような
設計を行うことが重要であるという意味で、
信頼はプラットフォームの設計にとって大きな考慮事項となる(P65)」

確かに、プラットフォームを、

「多様な主体の間で協働を成立させる技術や組織的基盤」と定義するならば、
その前提として、何らかの信頼がないと機能しないことは間違いない。

「信頼」としてのプラットフォームを考える上で、
非常にわかりやすいのは、お金。

「1万円」と書かれたただの紙切れに価値があるのは、
その前提として、政府に対する信頼があるのは間違いない。
そして、このお金をプラットフォームにして、
さまざまな協働が成立する。

自国の通貨に対して信頼が希薄になっていると、
他国の通貨や金銀、貴重品、
最近だと仮想通貨がプラットフォームの土台となっていきますよね。

また、「信頼」としてのプラットフォームには、
複数の人や団体をつなぐ上でのハブの役割もある。

「社会イノベーションの多様なプレーヤー間での信頼を醸成するうえでも、
信頼できる第三者の存在は重要な要素になるだろう。

プラットフォームに参加することで、
プラットフォームを信用の仲介者として、
他のさまざまな主体とつながっていくことができる(P65)」

ネットワークビジネスにどこまで持続可能性があるか?

プラットフォームの持続性を考える上で重要なのは、
個々の参加者に、どのようなインセンティブを付与できるか、という点。

この点に関して、『社会イノベータへの招待』では、
次のように記載されています。

「多くの個が参加することによって『ネットワークとしての利得』を生みだして、
それが着実に個の利益に還元させる、
『個の利益』と『全体の利益』の調和メカニズムを作って、

『持続可能な』協働の輪としていくことである。」(P66)

カギとなるのは、「ネットワークとしての利得」
これをどのようにシステム化していくか。

難しい問題ですが、
私レベルのアタマで考える限りでは、
以下の2つが思い浮かびます。

・ネットワークビジネス
・規模の経済

まぁ、ネットワークビジネスについては、
ご存じの方も多いでしょう。
誘われた方も多いでしょうしね。

確かに、一見ネットワークビジネスは、
「個の利益」と「全体の利益」の調和メカニズムが
できているようにみえる。

ただ、ネットワークビジネスと聞いて、
いいイメージを持たない人がほとんどいないように、
「持続可能な」協働の輪にできるかが非常に難しい。

ぶっちゃけネットワークビジネスは、
各人の家庭や友人という「強いつながり」を
食い散らかして広がっていくビジネス。

だから、収入という「個の利益」レベルで考えていくと、
ネットワークビジネスはどこかで先細りしがち。

ただ、利益レベルのインセンティブではなく、
(シュヴィーダーなら「市場値付け」的人間関係)

そのビジネスが扱う商品、あるいはその企業や団体そのものが、
もっと別の道徳基盤(<ケア><神聖>基盤)に訴求できるものがあれば、
爆発的にネットワークが拡大する可能性はある。

よく言われるように、「儲ける」の「儲」は、
漢字を分解すると「信者」になる。

つまり、信者を作ることができれば、
そのネットワークビジネスは、
宗教と同じような感覚で広がっていく可能性がある。

  やっぱり、ネットワークビジネスでも、
 成功しているところは、
 <ケア><神聖>基盤に訴求しています。

「子どもの健康にいい」とか言われたら、
お母さんとしては、やはり心動かされますよね。

社会イノベーションで「規模の経済」を考えることは可能か?

あとは、「規模の経済」という考え方による、
ネットワークの利得。

たとえば、『社会イノベータへの招待』では、
以下の例が紹介されています。

「『合同会社きょうと情報カードシステム』(KICS-LLC)が、
加盟店舗はクレジットカード手数料1%削減という
単純明快な還元スキームを作ることによって
1,300店舗が参加するネットワークを構築し、
店舗間の交流を活性化させていることなどは参考になる(P66)」

この場合は、加盟すればするほど、
合同会社KICS側にもメリットが増えるという、
わかりやすい規模の経済的なネットワークの利得といえます。

ただ、プラットフォームにおいて、
規模の経済を考えていくと、

「誰がプラットフォームを制するのか?」

という、プラットフォーム競争ともいうべき問題が出てくる。

企業の場合、プラットフォーム競争は死活問題ともいえ、
プラットフォーム競争を制する者が世界を制すといっても過言ではない。

かつては、VHSとベータマックスで、
熾烈なプラットフォーム競争がなされ(これはもう古いかな?)、

コンピュータだとWindowsがプラットフォーム競争を制し、
携帯電話だと、2017年現時点では、
ほぼiPhoneとAndloidでプラットフォーム競争がなされている状況。

ビジネスの世界では、とりわけ日本では、
プラットフォームを企業同士の協働でなんとかしようとしがちだけれど、
実際のところ、企業同士の協働によってなされたプラットフォームよりも、
空気を読まない企業が力技でプラットフォーム化したケースが多い。

「プラットフォームは通約不可能なので、
その闘いの勝敗を決めるのは論理ではなく力関係であり、
必要なのは協調ではなく競争である。」
(『イノベーションとは何か』P72)

ただ、これまで記載したプラットフォーム競争は、
おもに技術面のお話であり、

社会イノベーションの場合、
上記のようなケースを考える必要はないのかもしれない。

むしろ、現状は逆に、
みんながみんな独自仕様で社会課題に取り組みがち。

世界レベルだと、アショカのように、
一つのベストプラクティスを大陸レベルにスケールアウトしようという
動きもあるみたいですが、

  現実問題、社会課題の解決といった問題の場合、
 なかなかスケールアウトが難しいのもまた事実。

「ネットワークが大事だ」ってなお話は、
NPO業界ではずっと語られてきたお話ですが、
実際のところ事例が少ないのを見ても、
プラットフォームを考えていくのは、厳しいのが現状ではあります。

ただ、難しいとか無理といった批判は、
正直聞き飽きた人も多いでしょうから、

次回は、もう少し建設的な観点から、
社会イノベーションのための
プラットフォームを作る上での要素について考えます。

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