『世界を変える偉大なNPOの条件』-29-

   NPOの協働、ネットワークのありかたについて、
 原則と事例両方のアプローチの一環として、

 『世界を変える偉大なNPOの条件』(以下、資料と記載)を、
 題材に考えていったわけですが、

 しばらく、資料を使って、
 もう少し組織内部の話をします。
 具体的には、ヒト、カネ、組織運営の話です。

 ま、協働、ネットワークとは少し外れますが、
 その土台となるお話です。

 6つの原則を取り入れて外部に働きかけ、
 影響力を高めると同時に、
 その影響力を持続させるためには、
 組織基盤の整備に資金を使う必要がある。

 いずれか一方ではなく、その両方が必要である

 今回は、そのうち「カネ」について。

○NPOの財源って?

 資料の記述に従えば、
 NPOの財源は以下の通りです。

(1)政府
(2)個人寄付
(3)企業
(4)収益事業
(5)財団

 さて、一般的に、
 NPOの財源の種類は、以下の通りといわれます。

(A)会費
(B)寄付
(C)事業収入
(D)補助・助成
(E)受託

 上記(1)~(5)と、
 上記(A)~(E)の対比は、
 以下のようになります

・(A)会費、(B)寄付 - (2)個人寄付、(3)企業
・(C)事業収入 - (4)収益事業
・(D)補助・助成 - (5)財団
・(E)受託 - (1)政府

 これらの対比をベースに、
 以下の点について考えていきます。

(あ)政府、自治体との関係
(い)個人寄付を得るには、相当の資源を投入しないといけない
(う)「補助金依存の悪循環」に構造的なアプローチはできないか

○受託には「国や自治体の下請け化」リスクが大きい

 政府、自治体との関係について、
 資料では以下のように記載されています。

 調査した組織の半数は、
 連邦政府や州政府、地域の自治体に対して
 予算配分や業務請負契約などについて働きかけを行っている

 予算配分については、
 自分たちの団体にカネを回して欲しい、という以上に、

 自分たちが扱う社会課題に関して、
 予算全体の中から、必要な額の予算を回して欲しい、
 と要望すること。

 これが成功すれば、団体の規模に比べて、
 多くのレバレッジをかけることができます。

 業務請負契約は、説明の要もありますまい。
 ただ、資料でも、

 

政府の資金に大きく依存することは危険も伴う

 と記載されています。
 
 その理由は、以下の通り。

(1)自分たちの活動が、政府のさじ加減に握られる
(2)国や自治体の下請けになってしまう

 (1)について、わかりやすいのは、政権交代。
 
 アメリカは、民主党と共和党という、
 基本的には真逆の政治信念を持つ党が対立し、
 時々に応じて政権が変わります。

 すると、民主党自体には関連予算がたっぷりついていたのに、
 共和党になって大幅に予算が削られる、なんてのはざら。

 あと、そもそも予算が決まらないで、
 その間活動がストップ、なんてことも。
 
 ま、政策提言を主にする団体の中には、
 予算を政府に依存していると、
 思ったことがいえない、というのもあります。
 資料に記載されている「偉大なNPO」には、
 関係の薄いことかもしれませんが、
 (それゆえ、資料では取り上げられていませんが)

 現実に深刻なのは(2)の問題。

 受託を請け負ったNPOの多くは、
 多くの場合、国や自治体の「下請け」的扱いになります。

 与えられた仕事をこなしていれば、
 「生かさず殺さず」的に扱っていただける。
 企業でも「下請けいじめ」などといわれることがありますが、
 受託の場合、NPOで同様の構図が展開しかねない。

○寄付を得るためには、それと同等の代価を必要とする

会費や寄付は、自由度の高いお金といわれます。
 一番自由度の高いお金は会費ですね。

 政府や財団からの依存脱却となると、
 まずはココを増やそう、という話になります。

 

ただ、

 継続性のある
 市民による大きな寄付基盤は確実に役立つが、

 それを得るためには
 相当な資源を投入しなければならない。

 個人寄付に頼るNPOのほとんどは、
 政府や財団からの支援に頼る組織に比べ、
 
 寄付を開拓するスタッフを数多く抱え、
 予算も大きい

 エンバイロメンタル・ディフェンスでは、
 寄付の開拓担当職員が40名おり、

 寄付者数千人との関係維持を図っている

 えっ? そのための資金は、
 どこから調達するの?

 もちろん、べき論で言えば、
 政府や財団から、ということになるのですが、
 現実問題、なかなかそうはならない。
 ま、資料で書かれていることは、

「いいことやっていれば、みんなわかってくれて、
 応援してくれるさ!」

 なんてのが、幻想に過ぎないことを、
 教えてくれているわけです。

 一般企業だって、
 新規顧客を獲得するためには、

 商品、サービスを受け入れるための土台作り(マーケティング)
 商品、サービスの売り込み(セールス)

 これらに相当の資金と人材を投入しています。
 
 もちろん、インターネット時代になって、
 こうしたコストも安くなっていますが、

 少なくとも、

「寄付や会員を獲得するためには、
 一定のコストと人員が必要」

 という、ある種当たり前のことを、
 受け入れないといけない。

 現実は、多くの団体が、
 そのコストと人員を割けないから、
 みんな困っているのですが……
 この問題は、逆の立場からもいえます。

 よく、寄付の「中抜き」が問題になりますが、

 寄付を集めるその背景に、
 一定のコストと人員が投入されていることを、
 往々にして、私たちは忘れがちです。

○「補助金依存の悪循環」に構造的なアプローチはできないか

 補助金、助成金は、
 往々にして、麻薬的な側面を持ちます。

 それに組織が依存してしまうというわけ。

“「補助金依存の悪循環」(No.1003)”
 http://blog.revitalization.jp/?eid=810884

 ここに記載されていることは、
 NPOだけでなく、
 あらゆる組織にて起こっていることですよね。

 この問題は、特に日本では、
 NPO以上に、中小企業において、
 深刻ではないでしょうかねぇ?
 はっきりいってしまえば、
 多くの人にとって、
 
「役に立たない、赤字続きのNPOなんて、つぶれてしまえ」

 という声に、批判的な人は、
 業界人以外では、
 ほとんどいないんじゃないですか?

 では、

「赤字続きの中小企業なんて、つぶしてしまったほうがいい」

 という声に、心から賛同できる人は、
 多くはないでしょう。

 実際にそれで多くの中小企業がつぶれると、
 現実問題、多くの人の生活が困窮する。

 ま、ある種のべき論でいえば、
 役に立たない組織はNPOだろうと企業だろうと全部つぶして、
 個人のセーフティネットは、国が責任を持つべき、
 というのは、あるでしょうけど。

 そんなわけで、何かと、
 企業にも様々な補助金がおりたりします。

 
要は、「補助金依存の悪循環」問題は、
 ともするとあらゆる組織が陥る問題であって、
 解決の道は非常に難しい。

 この手の構造的問題の解決策は、ともすると、
 組織トップの意志決定に委ねられることになります。
 委ねる方は、その方がラクですからねぇ。
 
 ただ、現実解では往々にして、
 そうなってしまうのは仕方ないとして、

 構造的問題には、
 構造的なアプローチが必要ではないかと、
 個人的には思います。

 とはいえ、実際のところ、
 なかなか、そのアプローチが難しい。
 資料にも、そのへんは書かれていない。
 
 
「役に立たない組織は、つぶれるに任せて、
 成長分野への人材流動化を促す」

 一般企業の場合、よくこの手の構造的アプローチが、
 ある種の理想論として語られます。

 ただ、NPOの場合だと、
 この手のアプローチがどこまで語れるのか?

 極論を言えば、まちづくりなんかは、
 
「人材流動化して、地方はつぶれるにまかせればいい」
 
 なんて意見も、ありえなくはない。
 ただ、多くの社会課題の場合、

 社会的弱者を死ぬにまかせる、ということが、
 許される局面なんて、ないと思っています。

「それは、国が責任を持つべき」

 というのは正論ですが、
 国だけで責任が持てるなら、
 もう、多くの社会課題が解決しているでしょう。

 一つの解は、貸す側が定期的に成果測定して、
 あまりにも成果が出ていない場合は、補助金を中止する。

 ま、これも、「成果測定」について、
 様々な議論が必要とされる問題ではありますが。

 

…次回は「組織」についてふれます。

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