『世界を変える偉大なNPOの条件』-17-

しばらく、
NPOの協働、ネットワークのありかたについて、
原則と事例両方のアプローチの一環として、

『世界を変える偉大なNPOの条件』(以下、資料と記載)を、
題材に考えていきます。

今回からは、偉大なNPOが持つ6つの原則のうち、
「原則5:環境に適応する技術を身につける」について、
紹介したいと思います。

環境に適応する=PDCAサイクルをきちんと回す

 

NPOが「環境に適応する」と書くと、
言葉だけを見ると、反発もありそうですね。

「『世界を変える』とうたっているのに
 なんで環境を変えるんじゃなくて、適応しないといけないの?」

てな感じで。

要は、言葉だけを見ると、
「長いものにまかれろ」のススメと勘違いする人も、
いるかもしれませんね。

もちろん、この原則でいいたいことは、
そんなことではありません。

この原則を、より正確に言えば、

「社会環境の変化を適切に捉え、変化にあわせて、
 少しでも無駄なく、効果的に自分たちの活動を、
 適応、改善させていく」

ということになります。
ここまで書くと、ピンと来る方も多いと思いますが、
これは、PDCAサイクルのお話です。

P(計画)→D(実行)→C(実行結果チェック)→A(改善)

これを円サイクルにして、
ぐるぐる回していけば、
事業の成果がよりよくなっていきますね、という、
社会人にとっては、耳にタコのお話です。

環境に適応するイコール、PDCAサイクルをきちんと回す
そんなイメージを持っていただければ、
よいのではないかと思います。

資料では、PDCAを、
それぞれこのように表現しています。

・P:外部環境に耳を澄ます
・D:実験し、新しいものを取り入れる
・C:評価し、機能するものを知る
・A:事業や計画を修正する

資料を読み進めればわかりますが、
厳密に言えば、Pは、
外部環境ばかりではなく、
内部環境も含まれます。

イデオロギーに捉われると、PDCAサイクルを回しにくくなる

 

しかし、PDCAサイクルを回そうね、というお話は、
企業でも、往々にして、なかなかうまくいっていない。

では、NPOの分野では、
一般企業よりも、PDCAサイクルは回しやすいのか?

そんなことはない。
むしろ、もっと難しい。

「しかし、社会セクターについていえば、
 これらの資質を備えることはきわめて難しい。」

資料にも、こう書かれています。
ただ、この後の資料の文章は、
社会セクターに限ったことではないです。

「比較的大きな名の知れた組織の多くは、
 官僚主義に陥ったり、
 もはや機能しないような古い社会変革の進め方で行き詰ったりしている。

 彼らは、自分たちを取り巻く世界の変化に気づかなかったり、
 外部環境や重要な利害関係者から得られる情報を理解して、
 事業や戦術を修正したりすることができない。」

大企業についての記載とほぼ同じ。

「一方で、何千という生まれたての団体は、
 起業家精神に満ちて革新的であることを誇りとし、
 多くの新しい構想を生み出しているが、
 実は、必要のないことを何度もやり直しているにすぎないことが多い。

 創造的なエネルギーにあふれてはいるが、
 その構想を実らせるだけの管理能力やシステム、資源が欠けている。
 新規事業に失敗しても、そこから学ぶことができない。」

「革新性の限界は、創造性よりむしろ管理システムとの関係が強い」
(『戦略的イノベーターの10のルール』より)

ベンチャー企業についての記載とほぼ同じですね。

資料の記載は間違ってはいないのですが、
なぜNPOがPDCAサイクルを、一般企業よりも回しにくいのか?
この説明には、あまりなっていない。

ま、「なぜNPOがPDCAサイクルを、一般企業よりも回しにくいのか?」
この答えは、そう難しくない。

答えは、NPOは企業よりもイデオロギー中心で動きやすいから。

イデオロギーという言葉が難しければ、
「絶対に譲れない『あるべき社会』像」でもいいです。

別に、「絶対に譲れない『あるべき社会』像」だけなら、
ほとんどのNPOが持っています。
それが、NPOのミッションと呼ばれる部分なわけで。

ただ、そこにある種の教条主義がくっつくと、
どんどん「あるべき社会」が、結果的にディストピアになります。

個人的には、ある種の教条主義として挙げたいのは、
「永遠に変わらない敵」と「過去美化バイアス」かな、と。

「永遠に変わらない敵」といえば、
まぁ、ほら、大企業とか、外国とか。
(アメリカや中国なんかはよく槍玉に)

「主敵○○さえいなくなればうまくいく」だと、
それを土台にしてPが立てられ、Dがなされていく。
しかも、Pはリアルな外部環境とは無縁になりがち。

でも、実際のところ、よほどでもない限り、
敵をなくすことはできないでしょ?

それに、敵とされる存在がいなくなっても、
うまくいく(社会がよくなる)かどうかは、
現在では、相関関係が薄いことが多いです。

あと、「過去美化バイアス」というのは、
「良かったころの昔に戻せばうまくいく」ですよ。
別に、昔も今も、その時代特有のよさも悪さもあるわけで、
昔に戻してそれでうまくいくわけではない。

ま、それでも、
昔の良かった点を、今の社会に置き換える努力をするなら、
それもまたよし、なのですが、
往々にして、そうはならない。

ノスタルジアは、死に至る病。
そんなことを考えてしまうこともあるのです。

ここまで書くと、NPOのみならず、
政治の世界も、同様にPDCAサイクルが回りにくい世界ですね。

逆に企業の場合、
利益が出てナンボの世界なので、
相対的に、NPO(あるいは政治家)よりは、
イデオロギーに捉われずにすむ。

NPOは、なぜ環境に適応しないといけないのか?

 

では、NPOは、なぜ環境に適応しないといけないのか?
そもそも、環境って、具体的になんなの?

資料には、

「NPOは、市場と政府が交わる、絶えず揺れ動く位置に存在し、
 その時々の情勢に合った状態を保つために、
 適応することが不可欠だからである」

とあります。
まさにそのとおりですね。

NPO等の社会セクター、市民セクターというのは、
結局政府セクターと企業セクターが交わる位置にしか、
存在していないのです。

環境とは、基本は、
市場(企業動向も含む)と、政府であり、
その変化に適応することが、
NPOには問われるわけです。

えっ、自然環境はどうなのかって?
もちろん、急激な変化(地震とか洪水とか)があれば、
対応は必要になりますが、

それでも、あくまで、
そこから派生する市場や政府の変化にどう適応するかが、
いっそう重要ですよね。
具体的には、

「たとえば、公共政策が変化したり、
 政権政党が変わったりすれば、
 それに応じて政策支持の手法も変えなければならない。」

NPO関係者は、民主党が自民党に戻ったからといって、
落胆しているヒマはない、ということですね。

政権が変わろうと、支持すべきところは支持して、
合わないところは、変えなければいけない。
もちろん、ただ反対しててもしょうがないので、
有効な代案を提示する必要がある。

「また、経済や市場の変化を通して社会的ニーズが満たされるにつけ、
 自分たちの支持者を支えるために、
 新しく取り組むべき課題が何かを見極める必要がある。」

たとえば、若者支援というときに、
社会全体にとってレバレッジを利かせられるのはどこか。
それを見極めないといけない。

就労支援よりも、その前段階の対策が、
もっとレバレッジを利かせられるかもしれない。
次回は、何が変化を引き起こすのかについて、
ふれていきます。

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